『女奴隷は夢をみない』

女奴隷は夢を見ない (光文社文庫)

女奴隷は夢を見ない (光文社文庫)

なんでこれを読んだのかな、私。
いや、まあ、帯についていた「怖すぎて震えながら注文書を書いています」っていう書店員の言葉にまんまとだまされたわけですけれども。いやー。怖いか怖くないかで言ったら、微塵も怖くない! そして、タイトルみて一番気になっちゃったポイント「エロいかエロくないか」で言ったら……エロい!
なんなのこれ。なんで官能小説扱いじゃないの。主題はエロにないっちゃーないですけれども。もうそもそも、お金のために売買される女たちのオークションが定期的にある、というエロ漫画では定番すぎてもはや誰も使わないような設定で、私も気付いとけって話なんですけれども。まーなんでしょうね。ブローカー側視点の物語だし、何か、こう、エロにとどまらないなにか「物語」があるんじゃないかって、最後まで期待していたんですが、ありませんでした。
ありませんでした、は言いすぎか。いや、でも、主人公の青年と盲目の少女のパートは物語と呼ぶにはあまりにも浅いよ。もっと!もっとくれよ!展開を! 驚愕を! カタルシスを!!!

でも正直、動きたい、動かなくちゃ、動きたいんだ、と思っているのに最後まで何もしない彼の心境というか、あのへんのくだりは面白かったです。そうだよねー動かないよねー実際ねーっていうの、妙な説得力があった。
しかし、それだけに、彼の繰り返される無力っぷりというか、無痛症に裏打ちされた無感動っぷりは結局なんのためだったのかさっぱりわからなかった。
だって、普通の私にも彼の動かないっぷりは共感できてしまう。これは彼の無痛症とは関係ない。もっと何かあるだろう。最後まで、それを待ってしまった。途中までは性別が違うことを疑い、途中からは四肢がないとか?って疑ってみたけど、まったくもってそんなことはありませんでした。
なんやねーん。
タイトルで「女奴隷がしいたげられる何か」を期待してハァハァしちゃう人は、これを読むなら『ブラッドハーレーの馬車』でも読んだほうがよっぽど悲惨でよいですよ。
そうそう、途中でサディストの爺が出てくるんですけれども、この小説はエロいくせして一般書籍なもので、そのへんのサディスト描写とかがぬるくてぬるくて、そのへんも説得力に欠けていました。実際こういう制度が存在していたら、このくらいのサディストっぷりがリアルなのかもしれませんけれども、こんなクソ設定でリアルもへったくれもあるかいボケナスが、でございます。やるならもっと突き抜けたことやれよ。
あ。

さる高貴な女性の出品
は突き抜けすぎていて失笑すら出ませんでしたことを思い出しました。


主人公のぐだぐだ含め、三浦靖冬が漫画化したら迷わず買います。というか、一般書籍なんかで売るよりそうするべきですよ、この本、と読みながら何度も何度も何度も何度も思いました。