『向日葵の咲かない夏』

向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)

向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)

面白かった!
ある日主人公の「僕」は、いじめられっこのS君が首をつって自殺しているのを発見してしまう。しかし、S君は、あるものに姿を変えて僕の前に現れ、「僕は殺された」と訴える……という一人称小説。
妹の遺骨の一部を机に入れている、という不穏な空気が漂うプロローグから、心をぐっと掴まれまくり。なにがどうなっているのかなんとなくは想像できるんだけれども、だからそれでどうオチがつくことになるのか、が全然わからない。面白くて一気に読みました。なによりママが怖すぎる!!

ママも僕も、あきらかにおかしいこの小説。僕にとってのミカちゃんは、ママにとってのミカちゃんは、現実にはなんなのか。そもそも、この家族に起きている(起きた)ことはなんだったのか、というレイヤーの謎と、S君の死の真相はなんなのか、というレイヤーの謎が重なったときには本当にわくわくしました。
いやー。しかし、最後で家族の形を取り戻したかにみせておいて、実際のところ僕の病は深さを増したのでした、というのはなかなか救いがなくて良いですね!
よみごたえあったなー。楽しい読書タイムでした。