『静寂の叫び』

静寂の叫び〈上〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

静寂の叫び〈上〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

静寂の叫び〈下〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

静寂の叫び〈下〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

みんな大好きリンカーン・ライムシリーズの作者ジェフリー・ディーヴァーの本。なんとなく手にとってみました。こちらは単発もの。
聾学校の生徒と先生が乗ったスクールバスが凶悪な犯罪者グループにジャックされ、耳の聞こえない少女たちと先生は人質になってしまう。FBIの危機管理チームは、彼女達を無事に救い出し、犯罪者グループを捕まえることができるのか……?というお話。ドキドキハラハラの連続で一気に読みました。助かるよね? 美人でいたいけで耳が聞こえない少女たちと先生だもんね? 助かるよね? でも、これで、終わるわけ、ないよね??? という感じ。

予想していたよりも「耳が聞こえない」という点が派手に生きてこない展開でした。やりすぎるとゲンナリしてしまうだろうけど、若干物足りないかなぁ。「耳が聞こえないことが功を奏した」ってアクションシーンが欲しかったかも(目を閉じてしまえば現実から逃げられる、という形で何度も何度も「功を奏す」んですけれども)。自分が立てている物音に気付かずに先生が移動するシーンはまじで怖かったです。よくそんなことするわー。
生徒の女の子達を、裏の川から逃がしたり扉から外に放り出したりする機転っぷりは、かなりドキドキして好きでした。いや、でもそれ相当なラックを消費したでーーーーとも思いましたけど。ものすっごい例外的に見逃してくれちゃうんだもんな。いろいろ。
捜査官との妙な絆がなんかわざとらしくて、笑ってしまった。
こういう本の常套と言えば常套なのですけれども、醜い中年女性はひどい目にあうのですよねー。女子どもは容赦されるのがハリウッド映画の定石で、別にそんなことは気にしないで楽しめる派ではあるんですが、なんつーか、こう、若く美しく聡明な女性は助かるのね……と遠い目をしてしまったのでした。いや、まあ、そういう女性の中に助からない人もちゃんといるけど(ちゃんと?)。唯一の耳が聞こえる先生がひどい目にあうのが辛かったです。あの人かわいそうだ。万が一の時がきてもヒステリーにだけは陥らないようにしよう、と小説を読んでも映画を観てもしょっちゅう心に誓うわー。
まぁでも、最後の最後、なぜ犯罪者たちが余裕しゃくしゃくでいられたのか、は割りと納得がいったというか、「ああ、そういうことか!」と思えたので満足です。
100点満点かって言われるとリンカーンライム・シリーズには遠く及ばなかったんですけれども、でも面白く読めました。