『みんな元気。』 舞城王太郎

みんな元気。

みんな元気。

エンタテイメントとしてこれはどうなのよと問いたい。表題作はともかくとして。なんなんだ、この観念世界は。夢描写か。ちゃんと読めば理屈が通っているのかもしれないけど、でもそれにしても。だって、ぶっちゃけ面白くないよ?私の頭が悪いのが原因か?
登場人物の台詞は相変わらずいきいきしているし、表題作における家族というテーマも舞城らしくて悪くない。でも、なーーー。どの短編もみんな読み出しは楽しいのに、読んで行くうちにイヤになってきちゃうんだよ、読んでいることを。あーもーはやくこの話し終わらねーかなーって残りページ確認したりしちゃってるの。それって、どうなの。
作家が読者を放置して自分の書きたい精神世界を書くようになったら作家として終了だと思っているんですが。だとしたら舞城、あまりに寿命が短い。

錯綜する時間軸や、現実と虚構は、まあいいのですよ。読めばなんとなく理解できるし、それは嫌いじゃない。ただ、それが物語りの面白さを増すことに助力していない。むしろ物語りをつまらなくしている感が否めない。
朝ちゃんがつれていかれちゃって、家族は必死でおいかけて、でも朝ちゃん自体に拒否されて、本当は朝ちゃん連れて帰りたいんだけど思わぬ逆ギレで悪態ついちゃって連れないで帰っちゃって、結局家族がおかしくなっちゃって、でも朝ちゃんのかわりにきた治(だっけ?)もちゃんと家族になっていってて、唯士は唯士でいろいろで、なんだかんだで、選択で未来で「今」をせいいっぱい元気だして生きまっしょい!
なのは、いいんだけど。細かい描写はグっときたりするのに、その運び方がまるでまずい。読んでいるうちに視界がグニャリと歪んでいつのまにか違う時間軸にいる感じは悪くないんだけどなー。
っていうか、表題作はそんなに問題じゃないんですよ。
山火事の話とか、つらかった。ほんと、どうしちゃったんだろう。実験小説か?ってくらいに読みにくくて参った。トトロもね。トトロは読みにくくはなかったんだけど。なんだろうな、やっぱり退屈だったよ。
ああ、わかった。人物の気持が、どれもこれもよくみえてこないんだ。だから退屈だったのかもしれない。私の読解力とかが落ちているんだかなんなんだかわからないけれど。
阿修羅ガールを最後まで本気で面白いと思って読めた人なら楽しめるのかもしれません。私はダメだーー。

上のつづき

はてダから感想をめぐってみたんだけれども。みんなわりと「わからない」って言ってるのね。そうだよなーわかんねーもんなー。でもって「でも面白い。これが舞城クオリティー」的につながっている感想が多いのをみてちょと驚愕。
まて。
舞城は、文体のイキオイとバイオレンスでもっていっているようで、実は骨太なメッセージがあって熱血でエンタテイメントとして面白いからすごいんじゃないか。そのへんのスピードとリズムと物語のバランスこそが舞城の魅力じゃないか。「一見わからないのに、なんかわかっちゃう」からすごいんじゃないか。
「わからないから、なんかわからないまま」の小説の何が面白いものか。