『女王様と私』歌野晶午

女王様と私

女王様と私

先日おこなわれました麻雀大会で、id:on_tamaが優勝商品として手に入れたものを本人よりも先に借りて読んでしまったというアレな本です。だ、だって、積読がいっぱいあるって言ってたから……!!
面白かったです。本当に『長い家の殺人』を書いていた人とは思えない。すばらしきかなと両手を挙げて絶賛することはできませんが、でも読まされる一冊でした。途中から、どうなるのか気になって気になって読了せずにはいられなくなるタイプでした。私には、ね。
私が残念だったのは、女王様が割りと早めに女王様ではなくなってしまうことかなぁ。そこ重要だと思うんだけど。タイトルがよくないんじゃないかな。ちっと本文とタイトルにズレを感じました。そうだなー。『ボクと妹と女王様』とか(ひどい案)。

まずなににびっくりしたかって、主人公の年齢でした。44歳かよ!! 本人が言ってくれるまでの間ずっと20代半ばだと思って読んでいました。あぶねー。44歳という年齢が物語の本筋に結構からんでくるのでその設定は大事だと思うんですが。も、もうちょっと大人な文章で語らせても良かったんじゃないかな。いや、まあ、内面がまったく大人じゃないからあれなんですけれども。ちょびっとだけ、ちょびーっとだけ、もしかして、葉桜のあの描写も叙述の形をとっているけれども若くみえる文章でしか語れないんじゃないのか疑惑。
絵夢ちゃんの語り口とかぁ、女王様の語り口ヮすごく良かったよぉ。私ヮすんなり受け入れちゃぅ。これが44歳の脳内かと思うとさらに面白いですね。
ただ、あれです。全てが脳内である設定をあかすタイミング、明かし方が、どうも…。もったいねーって思いました。あらゆるご都合的な展開があったあとで、これは妄想だったからーってことに……それじゃ夢オチか、ただの。うーん。4回の願いとか、うーん。微妙だ。どこで願いを使うのかっていうドキドキは、ドキドキとしてチと弱い。し。来未ちゃんが色々言うところも、しょせんは44歳の脳内だろー?という思いがどうも……。なにかほころびがあったとしても言い訳できちゃう設定だよなぁと読者に思わせてしまうというデメリットをあえて背負うのはいかがなものなんだろう。
というか、バランスが悪いのかな。来未ちゃんと44歳との関係が崩れるのが早すぎる。来未ちゃんありきの物語なのに、それが丸々存在しないって明かすのがやっぱろ早いよ。そこでなえちゃう。ちょっと。うわーこのピンチをどう切り抜けるんだ引きこもり44歳ーって思ってたら、とんだ抜け道でやんの、という。うーん。面白いんだけど、うーん。
最後の最後の、探偵が死んでた理由は好きです。逃げられなかった理由にもなってるし、お、ここはちゃんと作ってるな、という感じで。
意欲的な作品だったと思います。きゃーえらそう!