読書日記 『キぐるみ』 D[di:]

キぐるみ―BRAND‐NEW NOVEL COMIC!! (BRAND-NEW NOVEL COMIC)

キぐるみ―BRAND‐NEW NOVEL COMIC!! (BRAND-NEW NOVEL COMIC)

『文藝』に連載されていた、異色作。マンガと小説がごっちゃになった作品。っつっても想像しにくいかもしれない。漫画のコマ割はされているんだけれども、そのコマの中に文字しかないページが延々と続いたり、突如あるシーンだけはそのコマの中に絵が描かれていたり、という感じ。その絵が、挿し絵なのではなく、シーンを文章で描写するかわりに絵で描かれている、ということ。
うまいこと伝わるかしら。
イっちゃってる顔とか、ブサイクっぷりとか、文字で書くよりも絵で描いたほうが伝わるところをうまいこと自然に見せていて、なかなか面白い手法。最終章はまるまる漫画なのだけれども、それもまた効果的だと私は思った。
漫画には、漫画でしかできない表現空間というものが存在している。
美味しいとこどりと言えば美味しいとこどりでズルイのだけれども、これはこれでアリ。
できるなら、この表現方法がひとつのジャンルとして後続の作家を産んでくれると嬉しい。これは彼女が考えついた方法かもしれないけれども、彼女にしか使えない方法というわけでは全然ない。
他の人が書いた(描いた)この手法の本を、是非みてみたい。


<この先は内容に言及。ラストについて書きます>
自分に対しても他人に対しても言い訳ばかりに長けている自分というものに対する自己嫌悪と、破滅。
最終的に家族の元に帰った、というラストの「ただいま」は、私は絶望的にみえた。
捨てて来た故郷であるとか、捕まえることができるはずがない夢だとか、粉々のバラバラになって自己嫌悪で死にそうになっても、狂いもしなければ死にもしない。そうして人生は続いて行く。しかも案外バラ色。
そういう強さというものが、この作品にはない。
それはある時期やある人種には美しくみえるのかもしれないけれども、私の好みではなかった。
ああ、あと、Gね。この組織の狙いは一体なんだったの???全然わからない。結局同じようなものを場所をかえて作っただけ???ただの権力抗争ってこと???ちょっと、この謎の組織の落とし所が見つからなかったんじゃないだろうか。ここんところが物語としては練り込み不足かな。


関係ないけど、この本の帯の推薦の言葉の数々がすごかった。帯が嫌いですぐに捨ててしまうのであまり覚えていないんだけど。
森博嗣が「奇跡」とかコメントしていたよ。それはどうなのよ。