読書日記 『リアル鬼ごっこ』 山田 悠介

リアル鬼ごっこ

リアル鬼ごっこ

すっごいながながと感想を書いていたんだけど、フリーズして消えました。死ね。リトライするぞ、ゴルァ。


まず、最初に、この本は自費出版でスタートした、ということを声を大にして言っておきます。そうでなかったら、世に出るわけもなかった本ですよ!これ!!


で、なにを書いていたかと言うと、要するにこの本は、ありがちな展開、存在しない行間、陳腐な描写、薄っぺらい人物、と良いところがないクソクソ本なのだけれども、なぜか支持している人がいっぱいいる、なぜだ、ということです。


結論を言ってしまえば、この本を支持しているのが、良書を読んだことがない文盲の子ども達だからです。


と、漠然と言っていても、「えー?」と思われることと思いますので、根拠としたページをあげさせていただきます。賛否両論くりひろげられております。
読者は文章の良し悪しや、内容の面白さについて語るべきではない、というようなミラクルオモロ記述がたくさんでてくるので、私の文章よりもコチラを読むことをオススメして止みません。
http://www.geocities.jp/mn676/hon/bungei/p/p0001.html
上記サイトをみると、この小説を支持しているのがどのような層であるのか、ということが如実にわかります。(中には釣りらしき書き込みもあるので、そのへんは差っ引いてみるべきだと思いますが、それにしても!それにしても!)


では、なぜ子ども達がこの本を支持するのか、ということを考えてみます。


この小説には、リアリティがかけらもありません。この場合のリアリティとは「この設定が現実的か否か」ということではなく「現実にこの設定のようなことが世の中で起きたとして、世界はどう動くのか」ということを指します。


おそらく、この作者は「不条理に行われる皆殺し」という設定にワクワクドキドキと憧れる厨房です。はっきり言って、『バトルロワイヤル』を書きたかったのでしょう。そうして、逆らうと殺される暴君(王様)の命令で、国中の「佐藤さん」が狩られることになる、という設定を思いついたはいいものの、そこから先、そうなったら世界はどう動くか、というところは想像できなかったのです。いや、想像はしたから、この小説を書いたのでしょう。でも、その想像の範囲がウンコ小さい。
まったくもって、こんなふうにはなりません。主人公の佐藤クンが都合良く生き残る、というのはヨシとしましょう。それくらいのご都合主義にはみな目をつぶることができるはずです。が。クーデターはそのタイミングでそんな風には起きないし、国ひとつぶんの人間が集っていたら、そんなにも画一的に盲目にはならないし、もっと色々なドラマが起きるはずです。もう細かいことは忘れてしまったのですが(私はこの本が話題になる遥か昔にジャケ買いしてしまったのでした!!)あらゆることが、あらゆることに対する大人たちの対処が、あまりにもお粗末です。


なぜそのようなことになったか。それは、作者が子どもだからです。厨房なのです。大人は理解してくれない暴君で、友達は命を賭して助けてくれて、妹は脳内キャラなのです。
作者が大人ではなく、世間というものの動きをきちんと観察していないから、リアリティがない。大人の読者は、この小説の中の世界の稚拙さに耐えられないけれども、子どもの読者は耐えられるという状況がうまれるのです。


もうひとつ、この本が子どもに支持される理由、それは、スピード感です。
ジェットコースターノベルとして知られる似た設定の『バトルロワイヤル』よりも、この小説はさらに速い。それは私も認めます。マッハです。文章が稚拙で描写が薄いから必然的に文章量が少ないからだ、というのがその理由なのですけれども、理由はともかく、あっという間に読める。
描写が稚拙でも、子どもたちは、自分がちょっとでも感情移入できそうなキャラクターがいると、勝手に脳内補完をして読みますから問題はありません。行間というものが存在していないから、余計なことを考える必要もありません。普通に読んで意味がわからない文章はさすがに3、4箇所しかありませんので、疑問を持たずに字面だけを追って読み進めてしまえば読み終わってしまうのです。


短い時間で読んだ本はグイグイと読めるわけで、グイグイと読めた本は、面白いと感じがちなのです。


そして、ラストにつきつけられる主人公の死。えー佐藤クンは助かるって思ってたのにー!!本を読み慣れていない子どもたちには、これは衝撃のラストになりえます。
はっきり言って、このラストの死は無駄死もいいところなのですが、そんなことよりも「主人公が死んじゃうなんて!」という衝撃のほうが、子どもには強く印象に残ることでしょう。
(おそらく、無駄死にと気付かないのではないかと私は想像していますが。なぜなら、作者が無駄死ということに意味を持たせていないから。つまり、作者本人も、この必然性のない無駄な死に疑問を抱いていない、ということです)


文章の良し悪しだとか、物語のリアリティだとか、比較する対象を持たない子どもには、この小説が十分に面白いものとして映るのです。
そして「こんなことが実際に起きたらどうしよう」とか「なんて重たいテーマなんだ!」と思ったりするわけです。うん、まあ、考えるっていうことは大事だから、いいんじゃないかな、ってオバチャンは思うよ。うん。


ということで、私の感想は「これは大人の読むべき本ではない」の一言に尽きます。しかし、ここまでのクソ本も珍しいので、興味のある方は一度借りて読んだりすると良いのではないでしょうか。自信に繋がるかもしれません。


では、最後に、「あーどうりでねー」な記述で満載の、作者本人のインタビューを。
http://www.bungeisha.com/bookstage/realoni.shtml
好きな映画「リターナー」ですよ!!


あ。『踊る大捜査線2』が面白かった人には面白いかもしれないです。