読書日記 『骨の袋』 スティーブン・キング

スティーブン・キングは、大好き!と思うような小説家ではない。楽しく読むのだけれども「好きな作家はキングです」と言うことには抵抗がある。それは、おそらく彼がベストセラー作家で、ベストセラー作家を好きと公言することに抵抗があるという私の歪んだ自意識のせいなのだけれども(同じ理由で平積みにされた本も好きとは言えない)。
けれども、気付けば、新作を買ってしまっている。
キングの作品は、いくつかのジャンルにわかれる。大きく言えば『グリーン・マイル』などの人情ものと、『ミザリー』などのサスペンスもの、『IT』などのホラー、の3つ。サスペンスとホラーは共に恐怖をモチーフにしたものだけれども、恐怖をもたらす元が、人間か、幽霊などの怪奇的なものか、という違いがある(と勝手に決めた)
私が好きなのは、圧倒的に前2者。そして、この作品は、最後のカテゴリーに入るホラーだった。
どーも、ダメだ!ダメでした。言い訳してみた。あんまり面白くなかったー。
失敗したなあ、と思うのは、チマチマと長い時間をかけて読んでしまったこと。正しいキングの読み方は、一日か二日で一気に読む読み方だと思います。ほんとに。一ヶ月近くもかけて読むべきではなかった。
私は、同じホラーでも『IT』なんかは大好きで、読みながら手のひらと足の裏に冷や汗をかいたものなんだけれども(後にも先にもこんな体験はこの時だけ)『シャイニング』はダメで、その理由は、悪霊が出て来てしまう、ということにある。幽霊じゃなくても、悪霊が姿を現すとダメなのだ。
(『IT』もそういう意味ではダメなのだけれども、ITがなんなのかわかるまでが延々とひっぱられるので、姿はいつまでたっても見えないからセーフ)
悪霊が出て来ちゃうと、もう、なんか、真剣に読んでいられなくなる。私がホラー的恐怖を感じるのは、正体不明なものに対して、であるらしい。有名な中編の『霧』とか、もう本当に大好き。これも、ピンクのニュルニュルしたものがこれ以上描写されたらアウト、とか思っていたけれども。そうそう、『パラサイト・イブ』でも、ミトコンドリアがピンクの巨大な「物」になった途端に恐ろしくなくなったし、『ガダラの豚』でも最後の戦いはまるでどうでもよかった。
話がそれました。
逆に、最初から恐怖の対象がはっきりとしている『クジョー』とか『ミザリー』も好きなんだけれども。今回は、なんだろう、セーラ?TR90の村の過去?うううん、どうも、イマイチなあ、と思わざるを。
それでもって、さらにこの本における登場人物たちの交流が、まるで物足りなかった。デヴォアも怖くないし。ちょっと、浅いんじゃないかなあ。カイラは可愛いんだけれども。一番私が不思議で不自然に感じたのは、ジョーに守られているという自覚と、マッティーに対する感情との狭間で、主人公がまったく悩まないこと。大人だから、亡き妻への裏切り、みたいなことは考えないのかしら。
と、まあ、不満たらたらでした。
ちなみに、キングの小説で一番好きなのは、『ショーシャンクの空に』の原作、『刑務所のリタ・ヘイワース』です。