読書日記 『透明人間』浦賀和宏

透明人間―UBIQUITY (講談社ノベルス)

透明人間―UBIQUITY (講談社ノベルス)

気づいたらISBN書くのすっかり忘れてた!ということで、ひさびさに読んだ浦賀だったのですが。
なにこれ。
という有様でした。ひどいね、こりゃ。私は割りと心情描写系は好きなんだけど、この構成はどうなの。前半延々と主人公の少女の心情。それも激しくうざい心情。読者の年齢や経験にも左右されるところだとは思うけれど、これはちょっとひどいんじゃないかな。というのが背表紙に書かれた事件まで続いたすえに、その後の解決がアレだという始末。
浦賀と言えば、時間軸を行き来する構成を得意としている、というのが私の認識だったんだけど、今回はそれも上手に機能しているとは思えない。ただ回想しているのみでまるで効果的じゃない。


<以下、ネタバレしまくります>


まず、背表紙に書いてある殺人が起きるのが434ページの本の244ページ目だっていうのが納得がいかない。地下室に閉じ込められることも前もってわかってしまうし、一体ネタバレって言葉をなんだと思ってるんだ講談社の人間は!!
別に島田御大の「ミステリーは序盤で華麗な謎を提示するべきだ」みたいな言葉を重視する気はさらさらないし、それを重視したとするならば主人公の少女の父親の死という謎が提示されるわけだけれど。何が起きるかわかっている状態で読める限界ってものについて想いをはせてしまったよ。
安藤直樹のシリーズっていうことで期待は大きかったんだけど、頭蓋の中の楽園でこのシリーズは終了だと思ったほうが良いのだな、ということがよくわかりました。安藤くんの推理もあまりにも工夫のない解決披露だし。いや、そのあとにまだちょろっとあるんだけどもさ。なんかもうどうでもよくなってしまっていて、最後まで読むのが正直苦痛でした。安藤直樹を安楽椅子探偵として周囲の人間でごちゃごちゃするのは無理があるんじゃないかな。あとね、飯島と少女、無理ありすぎ。まあもうそのへんの瑣末なことはいいけどさ。