読書日記 『四季〜夏〜』 森博嗣

四季・夏 (講談社ノベルス)

四季・夏 (講談社ノベルス)

四季シリーズの2作目。13歳の真賀田四季の小説。ヒマカの研究所ができるまで。
真賀田四季の天才っぷりというのは、結局のところ森博嗣の言葉でしか表現できないわけで、ということはつまり、森の思考が天才の思考をトレースしているということを認めないことには成立しえない、というのがこの四季を中心にしたシリーズの最大の難点だと思います。
森博嗣はある時期から改行を多用していて、私はこれが非常に好きではありません!折原みとか貴様!と言いたくなる。散文化させることで心情の断片的な側面を描写しているのだとは思うんだけど。でももういいよー。そういう手法は一作品だけで終わりにしてくれよー。
と、S&Mシリーズが大好きだった私は思うのでした。


<以下ネタバレしまーす>


とは言え、S&MとVシリーズとをしっかりと繋ぐこのシリーズにキャラ読み人間としては反応せずにはいられません。紅子さんきたー!林きたー!しかも犀川名乗ってるううー!!と、わかっていたこととは言えちょっと興奮。創平ちゃん学生服?!きゃー!てなもんです。
でも、それ以外にはあまり。叔父への感情の描写は私は別段不満なし。森小説っていうのはこういうものだと思っているし、そこにはある種のリアルがあると思うからです。誰もがみんな小説のような鮮やかでわかりやすい感情を持つわけじゃないというか。
ただ、うーん。ここまで感情を吐いてしまうのか、真賀田四季
そう、この作品(というかV以降の森ミス)は心情にしろなんにしろ、親切に書きすぎると思うのですよ。同じものは書かないそうだからそれは仕方がないことなんでしょうが。
両親殺害のラストシーンもね、こんなに説明いらないって思うのですよ。トレースできちゃうじゃないですか、これじゃあ。紅子への感情と同じ程度の描写でいいのになあ。四季の常人離れした不思議さ(つかまったときに脳内で仕事を終わらせるだとかそのへん)は描写すればするほどに理解可能圏におりてきてしまいますですよ。