『ZOKU』 森博嗣

ZOKU

ZOKU

森的表現を使うなら、内容が軽いからハードカバーにしているんでしょう。という感じ。私は森のこういう表現が嫌いではないのだけれど、鼻につく人にはたまらないんじゃないかと思います。(正しいのかどうなのか、正しいとしてどうなのか、微妙な表現)
森博嗣って、実はそんなにたくさんの種類のキャラクターが描けるわけではないんだな、と思います。でもそれは大概の作家がそうで、ただ、彼の特殊なところは、いわゆる「普通の人」が書けないところにあるんじゃないかと思うんです。彼が書くと誰も彼もがオタクっぽい。オタク社会の中で生きてきているっぽいので、周辺にサンプルがそれしかいなかったら当然だと思います。
この本の主人公は紫子ちゃんに萌絵の頭脳と恋心を足したような少女なのだけれども。こういうタイプの女性キャラクターのモデルってどれもこれも奥さんのすばるさんなんじゃないかという気がしてなりません。
本一冊の中ではキャラクターわけってできているけど、森博嗣の作品全体を見渡すと、結局のところキャラクターは数種類しかいなかった、という感じになるのじゃないでしょうか。


というわけでまた森語り。
S&Mシリーズが面白かった理由のひとつは、森が書きなれていなかったということにあるんじゃないかと思います。そのぶん不器用だけれど、丁寧だし、どこまでやってよいものか探っている感が今読み返すとあるからです。
森信者まで存在している今、森はやり放題で、好き勝手書いていれば売れる状態。あきらかにクオリティーは落ちている、と私は感じているのでした。
軽い本が悪いという私の価値観も間違ってるっちゃー間違っているのですが。でも、なんつうのかな。読後に何も残らないよ、この本。


<最後にネタバレ>


あの、最後、書いちゃうんだ。二人は一人って。そこまではっきり書いちゃうんだ。わぁ、びっくり。なに?森博嗣は年とっちゃったってこと?読者にわからないような罠はもうはらないの?

食いたりねぇぜ。