『悪魔を憐れむ歌』 蓮見圭一

悪魔を憐れむ歌

悪魔を憐れむ歌

ノンフィクションノベル。いやーすごいわ、これ。なんか、あまりにもすごいんで、現実感がない。現実のはずなのに。
埼玉でおきた愛犬家連続殺人事件の共犯とされた男が事件を思い出して一人語りする形式のノンフィクションノベル。
愛犬家連続殺人事件という事件そのものは、私も覚えていたんだけれど、どうも事件の規模の割りにあんまり覚えてないなあと思っていたら(林マスミは覚えてるのに)そうか、神戸の直前だったか、という感じでした。
こういう事件は、事件発生が判明したときとか、犯人逮捕の時だけはテレビでやいやい騒ぐから知っているけど、その後がどうなったか、とか、本当のところの詳細は、とか、知らないままで日々はすぎる。
私は基本的に気持ち悪いくらいに性善説を信じているというか、誰もがいつか悔恨にさいなまれると信じているんだけど、そうじゃない人間もこの世にはいるのかもしれないってことを、考えざるをえない。そういう本でした。
「悪いこと」とかはもちろん時代の価値観だから、あれなんだけどさ。なんていうのかな。罪の意識ってものを感じることがない人っていうのもいるっていうの、わかっていないわけじゃないというか。ある種のことに関しては私も罪の意識が皆無だったり、えーと、うまくいえませんが。
理解できないわけじゃない。でも。
ああ、奥さんが鼻歌まじりに手伝うところとか、なんていうかリアルで「わかるなぁ」って気持ちがした。