『四日間の奇跡』 浅倉卓弥

四日間の奇蹟 (宝島社文庫)

四日間の奇蹟 (宝島社文庫)

ふむ。面白くない。「面白い」の理由というのはいろいろあるものだけれど「面白くない」の理由をあげるのは難しい。「ない」部分をあげることは不可能だからね。とか、余計なことを書いちゃうくらいに面白くない。
以下、ネタバレするので反転してお読みください。

設定がどっかでみたような…ということに関しては、まあどうでもいい。似たような設定の話は昔からあっただろうし、問題はどう料理するかだから。とはいえやっぱり東野の『秘密』と比較してしまう。わけですが。どうしても。それはさておき。
私が一番いやだったのは、説明台詞で全てが語られていくところ。行間を読ませろよ、行間を!といいたい。
あとは、あれだな。真理子が泣きすぎる。目が覚めて泣いて、夢みちゃ泣いて、過去の話しちゃ泣いて、未来ちゃんに話しちゃ泣いて。そんな涙の大安売りしちゃったら、感動もクソもねーよ。
全体的に人間が描けてないまくりなわけですが。荻原も藤本も、結局のところにじみ出る人格というものはついぞないままに終了しましたね。壊滅的なことは、真理子の人格が、泣いてばかりいるために言うほど強く見えないこと。出だしの奇妙な明るさは良かったんだけどなあ。

あと、目をみて話すクセとかの説明が、いちいち思わせぶり。どんだけ伏線として生かされてくるんだろうと思ってワクワクしてたのに、肩すかしもいいところ。岡持ちの中の紙くずもね。告別式に来た義父母のこともね。もう、なにからなにまでね。
この作家はまだドラマつくりのメリハリがわかってねーんだろうなー、という感じがずっとついてまわりました。
強いて言うなら主人公の父親は好きでした。本人が出ない分、説明台詞がなくて、行動からだけ読み取れるからかな。

千織に関しては、なんかもう添え物?主人公も、なんで真理子の人格が千織に宿ったときに、真っ先に「じゃあ千織は?!」ってことを考えないかなーとか(あとで説明ありましたが)不自然なことこのうえない。
あと、結末がなー。真理子が千織の中に残していった恋愛感情?!うわあー。ひでー。ロリかよ!というね。
唯一ぐっときたシーンをあげるなら、千織がピアノをマスターしていく過程かな。
まあ、ひどい小説でした。うまく料理すれば、もっと良い作品になっただろうに。それだけの材料はそろってる。誰かリメイクしてください。