『複製症候群』 西澤保彦

複製症候群 (講談社文庫)

複製症候群 (講談社文庫)

西澤さんは、タイトルのつけかたがなかなか酷いといつも思います。
面白かったです。でも、なんかぬるいね。ネタバレして検証はしないけれども、このルール下においては別の解もありえそう。

円の中の人には外がどうなっているのかはわからないんだから、もっと他にも外に出ちゃった人がいてもおかしくないよなあ。要は、円の中に一人残してさえいれば隙をついて洋服をどうにかすることはできるんだから。あ。でも、主観的には自分こそがオリジナルだってことを疑うことができないようにできているから、自覚的にそれを行うことはできないのかな。んー意図的に作ったのであれば、その意志も引き継ぐか。
って、ここまで書いて気付いたけど、始末されるかもしれないとわかっている円の中に意図的に自分の分身を作れるほど人間は残酷にはなれないかな。そのへんの葛藤が読みたかったっていう私の願望なだけだ。ははははは。
外に出てからの話がああなっているんだから、この小説においてはやっぱりそれはナシだよね。ナシナシ。円の中にいる人の推理にそれがまったく出てこないっていうのは納得いかないけど。
あと、整形して入れ替わってましたーっていうのは反則じゃね?と思ったんだけど、それのバレる瞬間が円の機能とリンクしていて「これがやりたくてこの環境を設定したのかも!」と思うくらいに良かったので、まあヨシ。
これは、ちょっと人が死にすぎる普通のSF小説と読んだほうがいいんだな。たぶん。
なんにせよ、やっぱりぐんぐん読んじゃうな、この人の本は。面白かった。