『犯人に告ぐ』

犯人に告ぐ

犯人に告ぐ

面白かったです。なんか、すごい朴訥とした手触りの小説を書く人なんですね。ある種の親父小説なわけですけれども。劇場型捜査とかいって、すごい派手な煽り文句なのに展開地味で、ジワジワ感が「煮物」っぽくてますます親父感。うっかりハリウッド的なものを想像してしまっていたためにちょっと肩すかしでした。
でも、基本的にはかなり好み。
あと、親父っぽいという意味で文句を言うならば、巻島の髪型が…頭の中でスティーブン・セガールになっちゃうのを必死で我慢しました。その髪型でアルマーニってうさんくさくてたまらないことないですか。あと、スーツといえばアルマーニという構造が登場人物全員の頭の中にできあがっているようで、それも面白かったな。
肝心の内容でいえば、

犯人をおいつめる時よりも、獅子身中の上司をおいつめる時のほうがはるかにカタルシスを感じてしまったわけなのですが。ばーかばーか。学生時代に落とせなかった女にいつまでも執着してんじゃねー。まあ、リークしていく動機としてはかなり説得力のあるものでしたけど。
テレビ出演による世間のアレやコレやは、まあ、あんなもんなのかな。

しかし、思うに、ですね。犯人特定の決め手である「エンジをベージュと呼称する」のって、かなり無理がありませんでしょうか。ベージュって、かなりメジャーな色じゃない?まあ、だからこそ犯人特定になるというか、そんな勘違い他の人は滅多にしないよ!でもありえるかも!っていうギリギリのところでその色なんだろうけどブツブツ。
脇をかためていた、本田、小川、津田などの刑事たちがみんな割と好きでした。とくに小川くんはどこまでもヘタレで良かったですね!
ラストでは、ちょびっと感動もしました。贖罪のシーンってどうしても好きなんだ…。でも泣き杉よ。