『生首に聞いてみろ』 法月綸太郎

生首に聞いてみろ

生首に聞いてみろ

なんだか久しぶりに正統派なミステリーを読んだ気がします。というか、探偵がいて殺人がおきて解決されて探偵が解説して終わるようなミステリーを読みたくなったから読んだので、当たり前なのですが。
面白かったです。たぶん今後しばらくは彫刻をみるたびに目を見ちゃうんだろうなーという予感。
ただ、作中どうしても納得のいかなかったところがあって、

それは彫刻家川島伊作が妻の殺害に手を貸すという動機の弱さです。そこが一番のキモなのに、弱い。姉妹の入れ替えトリックはうまいと思いましたが、浮気程度で殺害に手を?しかも、デスマスクとるの?芸術家の考えることは一般人には理解しがたい、という論によりかかりすぎなんじゃないかと思いました。
自分の誤解に気付いた川島が命を賭した最後の作品で訴える、というのは納得なのですが。
宇佐美の動き方とか思惑とかはとても面白かったです。結局回顧展は開催できたのかな。できていることを祈ります。
自分が読みたくて読んだくせにこんなことを言うのはナンですが。やっぱり探偵役による最後の解説って構造は、間抜けっつうか、冗長っつうか、退屈なものですね。いや、それ読まないと真相わからないんだから必要なんですけど。こういう構造ありきなミステリーをここのところ読んでなかったから、また楽しく読めるかなと思って開いてみたんだけど、そうじゃないものを嗜好するような身体にすっかりなってしまったようです。
ただ

目を開いていた、という記述を目にした瞬間
は衝撃的でした。たぶん、この衝撃のために全てが準備されていた本だったのじゃないかと。「まじでー!」って言えたので、それだけで十分という気もします。