『暗いところで待ち合わせ』 乙一

暗いところで待ち合わせ (幻冬舎文庫)

暗いところで待ち合わせ (幻冬舎文庫)

いまさらかよシリーズ第二弾。えへへ。乙一はコンプしていません。うまいなーとは思うんだけれど、どうもイマイチ魂を揺さぶられないのです。荒ぶる魂の叫びを!荒ぶる神の子、宇宙皇子!「ラキシス!おいで!」(同時上映でした)
…どうも、自分からまろび出る言葉と時代の乖離を感じます。


とても面白かったです。基本になる「一人暮らしの盲目の女性の部屋にこっそりと住む逃亡者」という舞台設定のアイディア勝ち、という感じもします。後書きを読んだら、『死に損ないの青』で使おうと思って使えなかったネタを復活させたそうで。納得です。これは使いたくなるアイディアだよなー。
いくら盲目とは言え、同じ家の中に他の人の気配があったら気付くんじゃないの?とか、諸々思うことはあるかもしれませんが、設定が気になった人は迷ってないで読めばいいのです。
以下、ネタバレ含む
設定を思い付いた時点で勝ち、と上に書いたけれども、実はこの本の面白さの本質はそこにはない。


この物語は「人は一人で、生きていくことは、できるのか」に結論を出している。その問いも結論も陳腐というかありふれたものだけれど、でも、その綴り方がうなるくらいに上手いと思った。
ちなみに、私はミチルとカズエの関係が、あんまり好きじゃない。カズエのほうにも当然「私が離れたらこの子はいよいよ一人ぼっちになってしまう」という重圧があるはずなのに、そのカズエにかかる負担についてミチルが無自覚であるということが納得いかないので。
それでも

カズエ、外は楽しかったよ……!

には涙が出た。そうだ、外は楽しいのだ。

生きるということは、楽しいのだ。