『対岸の彼女』 角田光代
- 作者: 角田光代
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2004/11/09
- メディア: 単行本
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マンコ保持者としては、なんていうか、目をそらそうとして、否定しようとして必死でやってきていることを突きつけられた感といいますか。うん、まあ、なんていうか、あれです。学生時代のどこかで一度もハブられたことのない女子は皆この本を鼻で笑った後で死ねばいいんだ。
以下、ネタバレ含み。
簡単に言ってしまえば、これは、(対処法は違えども)人間とかかわることに臆病になっている二人の女の友情の物語なわけでして。
オトナになっても女特有(ではないと私は思うんだけど)の「3人以上が集まって、そのうちの一人が抜けたらその一人の悪口大会になる」的な空気というものはなくならない。その圧倒的な絶望感を抱かずに生きている女性が、この世にいったいどれくらいいるんだろう。
女どうしでペチャクチャとおしゃべりするのは比類なく楽しい。でも、それは、裏切られる恐怖と裏腹なものだ、と常に覚悟している、この感覚。いっしょにいるときは楽しいけど、席をはずした途端に悪口を言われているんじゃないかという恐怖から先に帰ることができない、そんな付き合い。
そんな煩雑さを心から恐れている専業主婦の小夜子と、そんな小夜子をなぜか雇った風変わりな女社長、葵。葵の中に小夜子は強さを感じ、見出し、憧れ、しかし、ささいなことからその強さや憧れが、鈍感さや無神経さに見えてくる。そのゲシュタルトチェンジの瞬間のもどかしさ。女と女が友情を育むということの難しさ。
そして、挟み込まれてくる葵の過去。葵にはかつて、ナナコという、やはり葵の目には強く写る存在が居た。小夜子→葵→ナナコという構図。見事でした。 全体としては面白かったです。
一番泣けたのは、オトナになったら…というテーマでもある部分対岸の彼女に、きっと声は届かない。けれど、懸命に手を振れば、返してくれるかもしれない。そうしたら、あの橋のふもとで、ゆっくりとお喋りしよう。