『魔王』伊坂幸太郎

魔王

魔王

ありゃー?という感じ。この「ありゃー?」は舞城の『阿修羅ガール』を読んだ時に似ている。つまり、ずっと明快で単純でまっすぐだと思っていた伊坂作品が読了しても理解できないというショック。
中篇2つが収められていて、後のほうは視点と時間軸を変えて前作の登場人物の一人が語り手となる形式なのだけれども。うーん。カタルシスどこー。
いや、つまらないわけではないのです。ただ、こう、フに落ちないというか。なんでしょうね。犬養の怖さとか、それに対峙する(というよりも世界のありかたに対峙する、なんだろうけど)兄と弟の姿勢みたいなものは伊坂っぽくて好きなのですが。
うーん。あとがきで、わざわざ作者自らが「これは政治的理念を描いた物語ではない」とことわりがきを入れなくてはいけないような物語だったから、なのかな。
結局のところ、わたしは伊坂作品に求めている何かがあって(それは多分『死神の精度』的なもので)(千葉ー)それがこの作品には不足していた、と感じた、という極めて個人的で勝手な思い入れによる感想なんだろうなぁ。