『老ヴォールの惑星』小川一水

なぜこれを買ったのか自分でもさっぱりわからないのですがなぜか買ってしまって正解だった幸せな1冊。SFブームは継続中です。
中篇集で、正直一作目を読了後は「ああ、失敗したかー?」と思ったのですが、他はどれも面白かったです。私はSFというジャンルにとても疎いので、もしかしたら日本の作家でこのテの作品を書く人の作品は初めてだったんじゃないかと読了してから気付きました。
表題作の、過酷な惑星で生きる”自分達の知識を伝えることができれば死ぬことは問題でない生物たち”の存在とか、涙しながら読みました。
でもなんと言っても面白かったのは「漂った男」です。水しかない巨大惑星で漂流することになった男。無線は生きているし、どうやらこの海水は食糧がわりにできる。何日漂流していようとも、生きていくのに問題はなさそうである。ただ、水しかない惑星で自分の位置を確定できない男を救助することが不可能に限り無く近いことを除いては。
というのが内容。
無線でだけ繋がる家族。ただ生きるためだけに人間は生きることができるのか。などなど、中編の中に要素がいっぱいで、それなのに重たくない。文句なく面白かったです。