『ムンクを追え』エドワード・ドルニック, 河野純治

ムンクを追え! 『叫び』奪還に賭けたロンドン警視庁美術特捜班の100日

ムンクを追え! 『叫び』奪還に賭けたロンドン警視庁美術特捜班の100日

小説だと思って買ったらノンフィクションだったというずっこけ購入なのですが、面白かったので無問題。実際の美術品盗難専門の捜査官の話。
書いた人がどういう人なのか知らないのですが、文章というか本の構成にまとまりがないのでものすごく読みにくかったです。同じ章の中で話が飛びすぎるし、同じことを繰り返しすぎるし、本筋、説明、補足、脱線、補足、本筋、みたいな段落の流れの、流し方が下手なのでつまづきながら読む感じにならざるをえない。
それでも面白かったといえるのは、実在の囮捜査官へのインタビューに基づいているというその特殊性ゆえと断言できるかな。いやーほんまにあるんやーこんな世界ーという。警察は凶悪事件にかかりきりで世界的名画であっても本気で捜査しない、だとか、へーって感じでした。
個人的にツボなのは

とくに世界有数の名画を盗む犯人にとっては、実質的利益も重要だが、同時に、自慢できるかどうかも重要なのである。
(中略)
大胆な犯行ほど大きな成功とみなされる。

というあたり。申し訳ないけれども泥棒たんハァハァという気分にならざるをえない。
唐突に差し込まれてくるムンク他画家や絵に対する薀蓄もそれら個々としては面白かったです。あと、大量盗難事件で有名として取り上げられているイザベラ・スチュワート・ガードナー美術館には私も8年前に行っているのですが、正直「なんじゃこの展示物たちは」という感想を抱いただけで、展示品にはほとんど関心を持てずにひたすら中庭にホワーってなってたことを思い出しました。ガードナー美術館そのものに関する記述も面白かったなー。たぶんまた行っても展示物には関心をもてないんだろうけど、あの中庭は再体験したい。
最終章はちょっと笑っちゃった。オスローったら!