『イカロスの誕生日』小川一水

イカロスの誕生日 (ソノラマ文庫)

イカロスの誕生日 (ソノラマ文庫)

なるほど、面白かったです。これはライトノベルになるのかなぁ(ラノベの定義はレーベルによるのではないかという話を昔MYSCONでしたような……)。わかりませんが、私的には表紙が漫画っぽい絵なのでラノベ認定。挿絵もあるし。
で、敬遠しがちなラノベなわけなのですけれども、ちょっと予想外でした。展開の壮大さと、そのまとめっぷりが。これを一冊でこじんまりとまとめるって、結構すごいなー。私はもっとありがちな日常レベルの異種交流だと思って読み始めたので中盤の展開あたりからウホウホしました。そっち方向にいくんだーへーという。
人物描写が若干きもいというか、ツンツンした彼(名前わすれた)のツンツンっぷりが「小説的なツンツンキャラ」なのが惜しい感じ。口は悪いけど思いやってくれる系って、割と同じテンプレの中に入ってしまうのはしょうがないことなんだろうかな。(まあ、ツンツンじゃなくてツンデレなことはわかりきったことなんですけれども)

でもやっぱり、助けに来てくれるところのかっこよさは良かった。良かった!! というか拷問こえー。さすがに描写はぶかれているけど、想像するだにこえー。
我々の目指している目標は一体なんなんだろう……?って考えこんでしまう社長も良かったですね。あ、そこわかってなかったんだ、っていう。あと、途中からなんだか神格化してしまう主人公が、神格化ゆえに取り巻く世界から浮いたりしそうだと思ったんですけれどもそれもなかったなー。鬱を期待しすぎですね、私は。
そのへん、もっと重厚にしてあるとより私の好みなんですが。でも全体的に無駄のない小説なので、たぶんこのサイズ
感で良かったんだと思います。
オチの

人間が達成できない高みを目指すための種なのではないかというのが、このいっこ前に読んでいた『アイの物語』とかぶっいて、とても興味深かったです。ああ、なるほど。人類は宇宙に出て行けないのだというのがSF的な結論になる時代なんだなぁ、と。
『アイの物語』が人類に代わって宇宙人を探しに行く、いわば健気系だとしたら、こちらは次なるステップとしての宇宙という成長系なので、意味合いが異なるのですが。
そういう時代なのですね。
しかし、キミとボクと世界に辟易している身としては、こういう風呂敷を広げてもらえると気持ちよい。
イカロスは自分勝手で人と協調することが苦手で独立心が強すぎるかもしれない。けれども、それでも、社会の中で「そうあれる位置」を見つけて、きちんと生きるのだ。