第25話 「パル」

24話までの流れで、私が大層気に入らなかったことは二つ。

  1. アーエルとネビリルが突如としてガチ百合になった
  2. シムーンシヴュラの面々が、みんなして、泉に行く決意の根底に「あの二人が永遠に今をとどめておいてくれる」ということをあげているように見える

まぁ、一つ目は良いとしましょう。唐突なので納得がいってないけれども、性別を選択していない少女同士の真剣な恋愛というのは、ある意味で最高のファンタジーというか、ストパニとはまた違う意味でアリアリと思えなくもない。
私が本当に最高にひっかかるのは、二つ目です。
アーエルは泉にいって選択をすることがイヤだから大人になることからの逃避の手段としてシムーンに乗っていたのではなかったか。
ネビリルはアムリアを喪失してもなお、テンプスパティウムの意志がどうであれかまわないと断言してもなお、ただ巫女として在ろうとシムーンに乗っていたのではなかったか。
パライェッタはネビリルのそばにいたくて、ネビリルを守りたくてシムーンに乗っていたのではなかったか。
モリナスは、ただひたすらにシムーンというものが好きで好きでシヴュラになったんじゃなかったのか*1
フロエは、カイムは、ユンは、ロードレは、アルティは、みんな、それぞれにそれぞれの想いを抱えてシムーンに乗っていたんじゃなかったのか。それがなぜ突如として「アーエルとネビリルが今を永遠にとどめておいてくれるから!」と言って瞳を輝かせて決意することになるのか。それはつまり、彼女達は全員永遠の今を本当はとどめておきたいのだけれど、と思っていることを意味するのじゃないだろうか。
え、そうだった? みんな、そんなことを思っていた? フロエは一度泉に行くと決意していなかった? 巫女として、果たすべきことがあるから、シムーンに乗り続けている子もいなかった?*2
ネビリルとアーエルが永遠に今をとどめる、ということの意味を、彼女達が永遠に大人にならないということの意味を、なぜ全員が全員美化して捉えているのだろうと思うと悲しくなる。ああ、なぜここにきてそんなにも薄っぺらになってしまったんだ。ここまで完璧だったのに!!!


でも、まあ、これは泉に行くなんていう選択肢のなかった私の単なるワガママな思い入れなんだろうということもわかっています。ただ、少女性というものをそんな形で安易に神聖視しないでほしかった。もう一歩、もう一歩踏み込めるところまで来ていたじゃないか、と思わずにいられない。


私は、ネビリルとアーエルが少女として永遠に今をとどめておいてくれる、なんていう理由付けがなくても、あの少女達に泉にいくことに納得してほしかった。そして「永遠に少女として今をとどめる」ネビリルとアーエルを、誰か一人でいい「それが本当にあなたたちにとっての幸せなの」と問うてくれれば良かった。たぶん、フロエあたりがそれをできたはずなのに。いや、フロエならば「そんなの間違ってる! 気持ち悪いよ!」ぐらいのことを言うことだってできたはずなんだ。そこを振り切って「私たちは、新しい世界での新しい生に賭ける!」と言ってくれれば、きっと応援できたのに。
少女である時代は、終わるから美しいんじゃないんですか。
これは少女であり続けることが不可能な私のゆがんだ何かなのですか。


ただ、ここで忘れてはいけないのは、オナシアの存在なのだと思うのです。彼女は泉で選択することから逃げた。その結果があの姿でした。永遠の少女であることはできない、と彼女は断言しているのです。オナシアと、ネリビル&アーエルは別の在り方をしようとしているということですよね。これが単に存在している世界の違いというだけのことだったらズコーなのですが。でも、でも、まだ終わってない! まだ終わったわけじゃないんだよ!
というわけで、あきらめないで(?)最終話に期待しようと思います。



ああ、あと、アヌビトゥフとグラギエフもアーエルとネビリルを送り出すことに協力したという点、嶺国の巫女たちも彼女達を送り出すことに協力した点を考えると、彼女達の共通の認識としてネビリルとアーエルに新しい可能性を見出していることは間違いないと思います。
そして、特に、大人組であるアヌビトゥフとグラギエフが、直前にテンプスパティウムの御前であんなこと*3をしたのはつまり、彼らが少女だった頃を呼び覚ます何かがあったのであり、つまり、
自分達はもう失ってしまった何かを守ろうと旅立つ少女達を応援せずにいられない
という心はわからなくはないというか、それならば理解できるというか。ぶっちゃけ皆の協力で空に飛び立つ瞬間はジワっと涙ぐみもしたのでした。

*1:それだけじゃ、なくなるよね、と何話かで言っていましたけれども

*2:シムーンに乗っていることこそが自分の存在意義であったリモネ、ドミヌーラ、マミーナの3人がすでにいないというあたりがまた……

*3:TVの前でアガガガガガガと口走りながら転げました