『魂萌え!』 桐野 夏生

魂萌え!〔上〕 (新潮文庫)

魂萌え!〔上〕 (新潮文庫)

魂萌え!〔下〕 (新潮文庫)

魂萌え!〔下〕 (新潮文庫)

ハードカバーの時からこの本の存在は気になっていたんだけど、この人の本は食傷気味になりやすいのでためらっているうちに文庫になったのでサクっと買ってみました。
面白かったです。旦那に先立たれた59歳の専業主婦に起きる、さまざまなことたち。
タイトルよくないんじゃないか、というのが読了後の感想です。「萌え」がいかんよ「萌え」が。なんかてっきり桐野さん新境地開拓!みたいな、笑いアリ涙アリどろどろアリの浅田次郎+桐野独特の女ドロドロ、みたいなものだと思ったら、全然ちがった。新境地にはちがいないけど、どっちかというと『恍惚の人』に近いよ、こりゃ。
敏子たち4人が、見知ったおばさまたちに重なって、色々考えてしまいました。栄子さんにそっくりな大叔母がいるんですよ……。

この栄子さんの、急激に変化したワガママさを、アルツか? アルツか? と思わせておいて、そうじゃないんじゃないかと敏子さんに気づかせる過程がうまい。
年老いた身内は動きも緩慢になるし判断力も低下するし、自分が面倒みて「やらないと」いけないんだろうな、と思ったり、とかく見下しがちだけれど、それを反省しました。スナオなワタシ。
真剣な「女の老後」を書いた良い本です。そういうことから目をそらしていたい人は読まないほうが良い。でも、年をとって急に偏屈になったと思う身内がいる人などは読んでみたらいいんじゃないだろうか。


しかし桐野夏生は女のドロっとした部分を書くのが本当にうまいな。それしか書かないとも言うんですけれども。それにしても、この本を「ホワイト桐野」と自ら呼んじゃうってすごい。白いのかよ!これが!(『OUT』よりはなー)