『フェイスメーカー』ウィリアム・カッツ

フェイスメーカー (新潮文庫)

フェイスメーカー (新潮文庫)

面白かったです。なんかちょっとメリハリがないように感じたのは、最近の構成に凝りまくったこのテの本に慣れすぎたせいかなー。でも十分に楽しめました。こういうエンタメ海外小説がたまにものすごく読みたくなる。
事故の後遺症で顔がめちゃくちゃになってしまった記者のカーリーは天才形成外科医の手で美しい顔を手に入れる。しかしどうやらその顔は……、というお話。
作中に「90年代の顔」というものがでてくるのですが、うっかりこれを「過去の時代の古典的な顔」と受け取ってしまいましたが読んでいるうちに、この作品が書かれたのは90年代であることを思い出しました。「真に現代的な顔」のことだった。私もその顔になりたいよ。いやなりたくないよ。なりたいよ。複雑。
『恐怖の誕生日』同様、追い詰められた女性の心理描写とか、敵が迫っているのに妙に無防備な恐ろしさとかは見事。ちょ、まて、まてまて、ってまんまと思いました。
しかーし!

犯行時間には警察の監視下にあったはずなのに、という条件をくつがえすのが「見張っていた警官が居眠りしていましたー」ってのは、どうなの!?
いや、ラヴァルの幼稚な性格なんかからして計画がずさんなことは明白で、完璧なトリックを用いるタイプの犯人ではなかったから破綻はしていないんですけれども。
しかし、あのママが主人公のところに行かなければ全ては違う方向に進んでいたのだろうなと思うと……いやまてよ、あの顔が有名になったら、他のあの顔の持ち主を知る人たちがパニックになったんじゃないか? やっぱラヴァルはバカでFAかー。
しかし、スレサーは哀れだなぁ。
などなどの不満点もあるのでした。