『楽園』宮部みゆき

楽園 上

楽園 上

楽園 下

楽園 下

面白いなぁというよりは、うまいなぁという感想。ぐいぐいと読まされてあっというまに上下巻おわったのだけれども、そして確かに面白かったのだけれども……。
模倣犯』を読んだときかなんかにも思ったことなんだけど、途中でノンフィクションなんじゃないかって錯覚してしまうくらいに、出て来る人たちが「居そう」。なんだけど、とても小説的。簡単に言ってしまえばキャラの立たせ方がうまい、とか、人物描写が巧み、とかになるんだろうけど、なんかしっくりこない。小説的リアルな人物たちの物語を読まされてしまったーって感覚がとっても近い。
文章も描写も巧みで、つるっつる読めてしまうんだもんな。
そいでもって私は、主人公の滋子さんが嫌いだー! 高橋弁護士が一番好き。小鳥のような多田くんは、よくわからない。小鳥のようって、どういうこと?

終盤、てっきり能力があるのは敏子さんのほうだったっていうオチなのかと思ったから仰天したら違った。等くんが乗り移ったんだった。えー。
この人が超常的な能力を小説のモチーフにすることは多いから、等くんの能力やそれをあるものとして扱うことにはなんの文句もないんだけど、のりうつるのはちょっとなぁ……。
茜さんが、昌子ちゃんと重なってみえたってところも、どうもいただけない。
等くんがみていたのは、悲しくつらいことばかりではなくて、梅園のような暖かいものもあったはずだ、というのは良かったけど、楽園、ねぇ……。
うーん。私は宮部みゆきの小説が好きじゃないのかもしれないな。なんか良い話になるところが、どうも好きじゃない。自分自身の嗜好を考えると、救済のある物語を好むはずなのに好きじゃないってーのは、この小説にでてくる「あおぞら会」的なうさんくささを感じるからかもしれない。
それでも、荒川さんが滋子につめよる、家族の中にろくでなしが出てしまったとき……、という下りはとても好きだ。


あと、この本はカバーを取ると上巻が山吹色で下巻が浅葱色になっているんだけど、それと対の帯がついているのがなんか奥ゆかしくて素敵でした。アマゾン画像では帯がない。(けどカバー下も見れないから関係ない)