『深海のYrr』

深海のYrr 〈上〉  (ハヤカワ文庫 NV シ 25-1)

深海のYrr 〈上〉 (ハヤカワ文庫 NV シ 25-1)

深海のYrr 〈中〉  (ハヤカワ文庫 NV シ 25-2)

深海のYrr 〈中〉 (ハヤカワ文庫 NV シ 25-2)

深海のYrr 〈下〉  (ハヤカワ文庫 NV シ 25-3)

深海のYrr 〈下〉 (ハヤカワ文庫 NV シ 25-3)

面白かった。面白かったんだけど、冗長にも感じた。ドイツ製SF。
ある日海で異変が始まる。鯨が人を襲い、ゴカイが異常発生し、海流が止まり、メタンハイドレートの上の氷が溶けて大陸棚が崩壊する。さて人類は、みたいなお話。もちろん本筋は「さて人類は」の部分です。コンパクトにまとめてハリウッドで映画化しそうな感じ。でもアメリカを巨悪扱いしているからないかな! 映画『コンタクト』のジョディ・フォスターのモデルになった、という設定の女性の役をジョディ・フォスターが演じて映画化したら面白いのに。
若干ネタバレすると、
色々な災害たちの原因は、地球に太古から存在していた単細胞生物が独自の発達の仕方で人類とはまったく違う種類の発展の仕方をしていて、陸上の支配者は人類だけど海中の支配者は彼らで、その彼らが人が害虫を駆除するように人類は邪魔だから駆逐しましょうかねって決めたから、なんですけれども。エイリアンは地球に既にいたんだ!というのはとてもとてもハァハァしますね! しかもそいつら、種としての記憶を地球に種として生誕したその瞬間から蓄え続けて持ってるんですよ。その設定だけでも読めてしまいます。そんなの相手にどうすればいいの!
個人的な思い入れは誰にも抱かなかったのですが、その興味一点で読了できました。強いて言うならピークが好き。

リーが成功しちゃって人類滅亡するENDもありかなーと思っていたのですが、そうはなりませんでしたね。なーんだ。ウィーヴァーが海底に向かうときの禅問答みたいなのが言いたかったところなんだろうと思いつつ冗長でメッセージ過多でオエーとなりました。インスタントな面白さしか受け付けないの!
そして、そんなことで解決できるのー?と理屈を無理やりこじつけたっぽい解決法に小首をかしげましたけれども、まぁいいや。脳みそを乗っ取られた海の生き物たちはどうなったんだろう。えーとカニのところで脳は別にちゃんと存在しているって描写があったような気がしなくもないのでゼラチンが退去したら元に戻れるのかな。でもロブスターの中身はカスカスだったような気も……。クジラたち……。
湖畔の別荘は心の中にあって、永遠の一瞬というものは存在する。
そういえば昔、金星は熱すぎて生物が住めませんって教えられたときに、熱くても平気な生き物とか、生存の定義が違う生き物がいるんじゃないのかなー???って不思議に思ったことを思い出しました。それは私たちが生物とは認識できないから存在していても意味がないのかなー???とか。子どもの頃は疑問に思っていたものでした。大人になってもそういうことをウネウネ考えているとこういう小説が書けるんだな、きっと。
あと、日本が捕鯨をしているって何度も何度も批判的に書かれているのをみて若干カチーンときたので、アラアラ私ったら、と思いましたよ。別にクジラ肉に思い入れないのにね!