『OUT』


物語 ★★★★★
映像 ★★★☆☆
演技 ★★★★★
総合 ★★★★☆

一言感想:よくできた原作もの映画。これなら納得。

小説の映画化というのは、えてして失敗するものだ、と言われるけれど。コレと『黒い家』は、成功した作品と言っていいのじゃないだろうか。
ていうか、ミステリーで原作モノでダメダメなのって、宮部作品ばかりのような気が…ってそれは私が観ている本数が少ないせいか。あぶなく断言するところだった。
私は原作をはるか昔に読んだ状態で、恋人はまったく読んでいない状態で観たのだけれども、二人ともが納得の一本。どちらの場合でも楽しめることと思います。私がまるっきり忘れていた(主婦の一人が殺しちゃってなんか仲良しみんなで隠すんだよね、程度のことしか覚えていなかった)っていうのもあるとは思うんだけど。
この物語は、普通の主婦たちが殺人の隠ぺいという普通ではないことを日常の延長でこなしていく、ということが大事で、それを表現するのに、倍賞美津子というキャスティングが本当に見事だったと思う。
生活に疲れた肝っ玉な感じ、そして、ラストの何かがふっきれた美しさ。もちろんキレ者役の女優(名前を失念)もちゃんと知的で口煩い主婦していたのだけれど、ちょっと美しすぎたかな。室井滋は頑張り過ぎというか、キャラ立ちすぎ。旦那を殺しちゃう役の女優も、なんつうか、うわーいそうだーこういう女ームカつくわーと思わせる。
女優陣の力をまざまざを見せつける、良い映画でした。


<以下、ちょっとだけネタバレ>


ラスト、小説ではどうなるのか、さっぱり覚えていないんだけど。こんなんだったっけ。倍賞美津子が火事を出してからが、ちょいとダレる。まだ終わらないのー?って感じに。
死体をバラバラにする作業が、ドキドキして楽しかった、と告げた彼女たちに、逃げおおせて欲しい、と心の底から思ってしまうのだけれど。きっと彼女達は逃げ切れない。
それでも、私って一体なに?という日常からは解放されるのだろうか。
関係ないけど、最初に殺した辞典で正直にドメスティック・バイオレンスのこととかを言えばあの奥さんは情状酌量になったと思うんだけどなあ。