『クライマーズハイ』 横山秀夫

クライマーズ・ハイ

クライマーズ・ハイ

わ。こんな内容だったのか。装丁に騙された!爽やかな装丁に、親父小説。でも親父小説に滅法弱い私には、泣けて泣けてしょうがない一冊でした。おもしろかった。
御巣鷹山に墜落した日航機を追う事件記者の過去のドラマと、衝立岩に登る現在のドラマが入れ子型で展開される形式。報道とは、親子とは、をストレートにズバっと書いてて、私は好き。


以下ネタバレ



あまりにも、日航墜落の頃の話が面白すぎて、衝立岩に登る話がでてくると、ひきもどされるような気持ちになりました。
タイトルにもなっているクライマーズハイ。衝立岩に登る悠木というよりも、日航墜落によって生じた新聞社のことなのだろうな。
もう、この地方紙で巻き起こるドラマの数々に、私は夢中でした。24かよ!おまえら!と言いたくなるくらいのドラマっぷり。実際のところ、こんな感じだったんだろうか。等々力さーん。うおーん。


いろいろな糸がきちんと織り成される、正統派なドラマ作り。最後の最後で、悠木が死においやったとも言える記者の従姉妹があらわれて…というのも、登場当初は「もういいよ」と思っていたのだけれど、ちゃんと意味があって、むしろ、一番の山場で、すごく面白かった。
命に大きいとか安いとか値段や価値があるのか、という問いは、なんというか、言い尽くされた感があるのは確実なのですが。ここまで夢中になって日航墜落を追ってきた悠木と心共にしている読者としては、グサリと突き刺さる言葉。
こんなの読んじゃうと、新聞マンに惚れちゃうやねー。