『プリズンホテル(1)』 浅田次郎

プリズンホテル 1 夏 (集英社文庫)

プリズンホテル 1 夏 (集英社文庫)

なるほど、これは面白い。ヤマグチがこの本大好きというのはおおいにうなずける話だ。
シチュエーションコメディーというのかな。まず、設定が面白い。そしてそこに配置されているキャラクターたちも個性的で面白い。ドラマが起きるべくして起きる感といえばいいのかな。とにかくグイグイとひきこまれてしまいますね。
作中の人間の存在感だとか、リアリティーというのは「本当にこの場にいたらこうする」とか、そういう等身大である必要なんてないんだということがすごくよくわかる。デフォルメされた人間描写の中にあるリアリティーっていうのは、書き手自身がそこで描けるものを把握していないと作れない。浅田次郎はすげーな、という話。
この話の中では、私は支配人が好き。作家の先生の錯乱っぷりにはたまについていけませんよ。でもお母さんとのことを思い出すところではちょっと泣いた。
笑えて、泣ける。まさに。