『憤怒』 G.M.フォード

憤怒 (新潮文庫)

憤怒 (新潮文庫)

面白かった!最後までグイグイと読まされてしまった。
ものすごい下品でひどい奴で、国中の誰もが死刑を望んでいる連続レイプ殺人犯。けれども、その死刑執行の一週間前に、彼の有罪を決定づける証言をした女性が自分の証言をひっくりかえす。やっとのことで国民が怒りをぶつけるべき「犯人」を見つけた警察は、彼女の新証言を受け付けない。そこで、彼女は、かつて唯一自分の話を真摯に聞いてくれたある新聞記者に助けを求める…。
てーな出だしです。この新聞記者の過去やら、相棒となる女性カメラマンやら、あまりキャラクターが魅力的とは思えないのだけれども、とにかく展開が気になってどんどん読んでしまいました。なんてったって、明らかに連続殺人犯としてはぬれぎぬの死刑囚が、まったくもって助けたくない最低な人間なところが面白い。こいつを助けるために奔走を…ッ!!キー!みたいな。真犯人は、よっぽどケチョンケチョンにされるんだろうな!!遺族のためにも!!!なんて、熱くなっちゃいましたよ。

しかし、てっきり警察の身内(上のほうの立場の人の息子がかかわっているとか)が事件に絡んでいることがわかっていて、揉み消していたんだと思っていたら違いました。ずこー。そこまで腐ってなかったー!みたいな。ドナルド単独でしたー!
でも、あれです。ウォルドの苦々しい言葉(本当なら罰っせられてもおかしくないのに、表彰されるなんて、みたいなやつ)とか、なかなか面白く読みました。清濁あわせ飲んで世の中はまわっていく。
それにしても、アメリカという国は本当に雑多な人が雑多な価値観で生きているんだなあ、と。死刑執行の数日前からキャンピングカーで集ってピクニックをしている貧民層の人たちって、どうなんだ。
タイトルの元となっているシーンにはちょっとキザすぎる匂いを感じましたが、でも満足です。シリーズのようなので、他の本も読んでみよう。