『キャラねっと』 清涼院流水

キャラねっと―愛$探偵の事件簿

キャラねっと―愛$探偵の事件簿

オンライン生活ゲーム「キャラねっと」を舞台に繰り広げられるミステリー風味青春ドラマ…なの…か…な…。オンラインゲーとしてはちょっと楽しそう。そりゃみんなハマるわ、という気もする。けど、そんなにも大人数が継続的にやるには戦闘要素がそれだけじゃもたないんじゃねーのという気も。まあ、それはいいんですけれども。
えー。JDCシリーズほどには辛くなかったです。一応軽快な文章で物事がさくさくと進み、サーカスを2度見せられることもなく。オンラインゲーの自分のキャラをデリられることを「殺人」として犯人を探す趣向は面白かった。

ただ、まあ、なんていうか、現行のオンラインゲーと大きくことなる2要素
GMが「せんせい」と呼ばれるAI(と見せ掛けて中の人がいたりする)
音声認識による入力がキーボード入力と並んで主流
というオリジナル要素が、ことごとく犯人あてのヒントになってたのはどうなのかな。え。えええ。解決のために設定されたオリジナル設定じゃないかー、みたいな。
ただ、まあ、御大なので、それもありかな、とか思ってしまうあたりが負けなんですけれども。
あと、そんだけ大人数が同時に接続しているというのに、会話にフィルターかけてチェックしているって、どうなんだろう。同時に外国語で入力された場合には翻訳して出してるわけでしょう?まあ、このへんはホニャクコンニャクと同じでファンタジーと捉えるべきなんだろうけど。で、それだけのシステムをまわしているのに、収入がスニーカースポンサーからだけって、やっていけるのかしらね、とか。パーティーが自動割り振りの4人固定で三ヶ月強制って、もっと脱落者が多くなるんじゃないかなとか。
そういう、本筋に関係ないっちゃー関係ない部分は色々考えました。
あとは、これはもう清涼院を読む以上しょうがないことなのですけれども、名前が、ね…特にこの作品はHNなもんだから御大絶好調!という感じのネーミングが炸裂していました。
まあ、基本的につまらなくはなかったです。

ただ、社長であり、兄であり、黒幕であるところの語り部がひどい。ぬるい。なんなんだこの半端な人格。べるをお金で買って妹にしている、という設定がまるで生きていないあたりとかは逆に面白いんだけれど。最後の章が蛇足だよな、と私は思いました。もっと含みをもたせて終わればいいのに。
あ、でも、なんか奥付の手前に「これで終わりではありません。本当の事件はむしろこれからと言ってもいいでしょう。○月に発売の○○をご覧ください」みたいなことが書かれていたから、意図的なのかもしれないんだけれど。


なにはともあれ、これでまた当分清涼院は読まないでしょう。月に1册が限界。