『終戦のローレライ』福井晴敏
- 作者: 福井晴敏
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2002/12/10
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名も知らぬ 遠き島より
流れ寄る 椰子の実ひとつ
故郷の岸を離れて
汝はそも波に幾月
面白かった。面白かった、という言葉は適切じゃないかもしれないくらい、なんていうか、読みながら打ち震えた。
言葉がない。
この本は、多分に説教臭い。そしてそれでいて、手に汗握る。青臭いまでに福井の主張を感じながら、物語の進み辿り着く先がおぼろげながらに見えていながらに目をそらしつつ、ページをめくる手を焦らせることも止めることもできないような、なんだろう「真摯な気持ちで読むべき本」とでも言えばいいのか。
あーでも、違うんだ。そんな、主張ばかりの本なわけじゃないんだ。面白いんだよ。もう、どうなっちゃうの?どうやってこの局面を乗り切るの?なんだよ。「用意っ…てッ!」って魚雷をね!こう、ドキドキ、とね!うずまく陰謀の存在のほのめかしも、その幕が開くところも、鳥肌が立つくらいに素晴らしくエンターテイメントしてるんだよ。言行に恥ずるなかりしか
気力にかくるなかりしか
努力に憾みなかりしか
不精に亘るなかりしか
至誠に悖るなかりしか
でもやっぱり、ここなのかもしれないなぁ。ああ、泣ける。ほんと、号泣した。私なにしてんの、ここで、ってな気持ちですよ。
わたくしたちは、生きます、と絹見に誓いたい。高須に、清永に、田口に、岩村に、大湊に、フリッツに、パウラに、征人に、浅倉に。私の祖父と祖母たちに。
そんなこっぱずかしいことを、真剣に思う本でした。
ハシモト(id:hashimoto_s:20050218:1108698614)ではないけれど、本当に、お前ら一人残らずこの本を読め。育ち、成熟し、子を成して、子にも読ませろ。