『人のセックスを笑うな』

人のセックスを笑うな

人のセックスを笑うな

人は滅多に自分のセックスの話を他人にしない。噂話や下ネタならば楽しいけれど、本人が目の前で語る自身のセックスの話は、あまりにも生々しすぎる。相手のことも知っていた日には、不可抗力的に浮かぶビジュアルを消すのに必死にならざるをえない。勘弁してクレーーー。
でも、ごく稀に、例えば良い方向に悪ノリしてきた飲み会で、自身たちのセックスの話題になることがある。そして、そのごくごく稀な機会におけるセックスの話は、たいていすごく面白い。
Mちゃん曰く、村上龍の『限り無く透明に近いブルー』において黒人とのセックスでやっていた、串刺し状態でチンコを軸にクルクルまわるプレイができるかどうか試した結果、女がツマ先立ちでトトトトと回らないと無理なのでかなり滑稽なことになることが判明した(あの記述でよくもまあ試す気になるもんだぜ!!)
Sちゃん曰く、ホテルでタオルをほっかむりして「カワウソくん(『感染るんです』吉田戦車)の真似〜」ってやっていたら、吉田戦車ズキの彼氏は大層喜んでくれた。のだけれど。その喜びの興奮を吊り橋効果的勘違いで性的興奮に置き換えてしまった彼氏に、そのままの状態で「カワウソくんッ!カワウソくんッ!」言われつつヤるはめになった(この彼氏は本当にちょっと頭がおかしくて大好きでした)
などなど。


この本は、そうした話にはまったく関係ない。


私は滅多に恋愛小説というものを読まないのだけれど(恋愛はするもので読むものじゃない)、たまに「お。」と思う本がある。前回そうして手にとったのは『センセイの鞄』で、これが実に当たりだった。ので、今回も自分の「お。」を信じて読んでみた。
面白かったです。
ただ、なんていうか、あれだ。いろいろと突き刺さって痛かった。
この本1000円は、でももったいないな。といって、文庫に他の中短編と一緒におさめられてしまったら、こんなに素敵には感じないんじゃないかという予感もする。