『月の裏側』 恩田陸

月の裏側 (幻冬舎文庫)

月の裏側 (幻冬舎文庫)

毎度のことながら、中身に関する知識を意識的に遮断して読みましたので、大変に驚きました。他の人たちは私ほどには遮断をするまいという前提でなにに驚いたかを書いてしまうと、ホラーだったーーーーー!!ということです。
いやマジびっくり。こういうものも書く人だったんですね。いやーびっくりした。普通に怖かった。でもなんか、スティーブン・キングと何かを足して割って水で薄めて口当たりを良くしたようなそんな印象。
全体的にジメジメしているので、梅雨の時期に読むと最適だと思いました。途中とめずに、雨の日の休日に一気に部屋で読んだりするのが一番楽しめる方法だと思います。


全体的に、仕掛けがあまり上手に働いていない感が残ります。面白かったし、どうなるんだろうとハラハラもしたんだけど、うーん、なんだろうな。何かがしっくりこない感。
凸が凹に、はまっているんだけど、キッチリとははまってない、みたいな。
協一郎パパは初期には「知ってて隠してる」感があったのに、なにをどこまで把握していたのかわからないというか、結局そう見えただけだったのね、という結論でいいのかな…?というような不安定感。
多聞の、愛されるという受動態でいる才能に関しては、感服。なるほどねぇ、と思いました。
以下ネタバレ


つーかこれ、エヴァじゃねーーーかーーーーーー。ゼーレもNERVも使徒も知らずにただただ人類補完計画に巻き込まれた地方都市の人々の物語、ってことでFAですよね?
面白かったですが、いかがなものかポイントもかなり高いです。
あと、街の人々がいなくなってからの数日間、お風呂はどうしていたんだろう…とか思ったんですが、それは、「もし自分なら水を恐怖するようになるからお風呂に入れないな」という前提のもとの疑問であって、この登場人物たちはまったく水を恐れてはいなかった(堀に続く水溜りは恐れてたけど)ので、あてはまらないわけで。なんとも不思議なメンタリティーの人たちだ、と思いました。
あとラストの藍子ちゃんはひどい。碇シンジをさしむけるぞ!
途中、この物語に恩田はちゃんと決着をつけるのか…?ということのほうがドキドキしていたことはナイショです。これがキングとかなら安心して物語に集中できるんだけどなー。
でも、面白かった。満足。