『十八の夏』 光原百合

十八の夏 (双葉文庫)

十八の夏 (双葉文庫)

どうにもこうにも苦手なのだ。こういう小説が。繊細な何かを抽出しようとするような、その空気が苦手だ。『ひとのセックスを笑うな』とか『センセイの鞄』は平気だったんだけどなー。もうこのへんは、そのときのバイオリズムとかに関係しているんじゃないかとすら思えて来ます。ただ、基本的には感傷的にすぎると、どうしても「バカじゃねーの」という目でみてしまう。
で、この本は、ダメでした。



表題作が、河原で出会った絵を描く女の人の話かな。こういう物語りを青春時代の甘く酸っぱい1ページとは捉えられない。父親の恋人?くだらん。という気持になってしまった。大体、なんだ、その電波ぶった女は。実にくだらん。少女漫画をくだらないと思う人が、たぶんこんな気持ちなんだろうなーと思います。
最高にゾゾゾーっとしたのは、演劇をやっているお兄さんの話。なんだこの寒い人間描写は。なんだこのノリは。異常なキャラ立ち。二次創作かと思うくらいでした。こんなの、Vシリーズの紫子ちゃん以下のレベルだ(ひどい)(いろんな意味で)演劇やってる中にこんな人いないとか、そういうハナシをしているのではありません。キャラを立たせるために漫画的に描写しすぎだと言っているのです。ひどい。
たった一度の名演、彼女が「お姉さん」ではなく「お義母さん」だとわかったときのポーカーフェイスも、もっとうまくもっていけば良いシーンだったろうに。
唯一私がまあまあ読めたのは、最後の一作。昔中学生だった教え子が…というのはエロいし、いいもんですね。肉体という誘惑に負けそうになってギックリ腰で我に返るというのはすごくうまいと思いました。うん、この作品だけは評価。
あと、なんだっけ。ああ、古本屋さんの再婚の話か。息子の「便所のニオイがした」が、あまりにもショッキングだったので、なんかそのあとの「芳香剤の匂いに似た金木犀」というオチでは私の心にできた傷をうめることができませんでした。便所のニオイ…便所のニオイ…まぁ、でもこれが次点かな。