『扉は閉ざされたまま』 石持浅海

扉は閉ざされたまま (ノン・ノベル)

扉は閉ざされたまま (ノン・ノベル)

この人の本は初です。面白かったです。物語の視点が面白いし、オチも予想外でした。新幹線の中で一気に読んだのですが、その読み方に適していたなーと思います。
もともと本は一気に読んだほうがいい派ですが。

犯人視点の本というのをあまり読んだことがないので、それがまず新鮮。たいがいミステリーって探偵の助手視点で、探偵と犯人は助手の前で知恵比べをするけれども、どちらの心境も描写されないじゃないですか。そしてまたこの犯人が人を殺した後の心理描写とかが「ああ、そういうもんだろうな」と思わせるというか。
ただ、動機は納得いきません。なんだその義憤。
説得力のある天才少女(少女?)という点で、この作品のヒロインも評価できます。冷静だけど熱い主人公と、冷静で冷たい少女。コントロールされた表情というのはすごくわかりやすいと思いました。
ただ、このキャラクター付けだと最終的に探偵(少女)は犯人(主人公)をどうする気なんだろうなーと思っていたら、あのオチですよ。なるほどね。主人公と探偵が幸せになれるとは到底思えませんが、そういうことは抜きにして、なんというか小説としてきれいにまとまっていて良かったと思います。