『魔女の血をひく娘』 セリア・リーズ

魔女の血をひく娘

魔女の血をひく娘

マサチューセッツ州ボストンの研究機関でアメリカの植民地史を研究するアリソン・エルマンは、ある日、古いキルトの中から、多数の紙片を見つけた。それは、いまから340年あまり前に、「魔女狩り」の危機を生き延びたひとりの娘の「日記」だった。

マシャッ…マシャチュー…マシャチューセッチュ…マサチューチェッ…というアニオタ萌えネタはいいとしまして。その日記がまるまる掲載されているのが、この本でした。
とても面白かったです。平和に暮らしていた少女と祖母が唐突に陥れられる危機。残忍に殺されてしまう祖母を見守るしかない少女。そして「祖母が死んだら次は私だ」ということがわかっていながらどうすることもできない恐怖。それらはほんの序章にすぎないという現実。
私は日ごろ「魔女狩り」というものを、ともすると寓話のひとつであるかのようにとらえてしまうのですけれども、ああ、これは史実なのだ…と妙に実感しました。時代背景が解説されているわけでもなく、ただ本当に少女が淡々と書き綴った日記を転載してあるだけなのですけれども、それだけに怖かったです。その淡々としているっぷりが。
私がなによりも驚いたのは、彼女が魔女というものを(そして自分が魔女扱いされることを)どうとらえていたのか、という部分でした。


彼女も、彼女の祖母も、不思議な力を持っている存在として自覚して当たり前のこととして受け止めているのですね。なるほどなー。てっきり心当たりのない人たちが、薬草に詳しいなどの言いがかりで魔女狩りにあったんだと思っていたんですが。違うんだなぁ。不当だ、という意識は、だから「こうなる前はみんなだって頼っていたのに」「みんなおろかだ」というところにしかいかない。なるほどなぁ。
そしてまたそれを見抜き「私もそうだからわかる」という女性が存在しているということ。彼女個人に限ったことじゃなく、本当にこの頃にはそういう力があることが当たり前だったんだーというのはなかなかのカルチャーショックでした。
そして植民地に逃れてからの恐怖の日々と、最後の逃走。彼女はちゃんと生き延びたんだろうか…。とても気になります。カケルが助けてくれていると信じたい。
続編がすでに出ているので、私は買おうと思っています。
エンターテイメント的なものを期待してしまうと肩透かしですのでご注意を。