「SHINOBI」

山田風太郎の『甲賀忍法帖』原作。『バジリスク』のアニメ版のみを観た状態で鑑賞しました。小説&漫画は未読。
私は大変に面白かったのですが、誰にもオススメすることのできる映画かと問われると首をブンブンと横に振らざるをえません。下記の条件にあてはまる方には不向きな映画ですのでご注意ください。
・いろいろとちゃんとしている映画が大好きな映画ファン
・原作を微塵も知らない映画ファン
・『甲賀忍法帖』にしろ『バジリスク』にしろ、原理主義寄りの原作ファン
・別に原理主義ってわけじゃないので映画は映画で別作品としてちゃんとしていてくれれば良いよ原作ファン
・地虫ファン(出ません)
まず、映画ファンにオススメできないのは、映画として色々とお粗末だからです。そこを楽しめる人ならば良いかもしれませんが、あまりにも色々と端折っているので脳内補完なしには物語として楽しめないのではないかという気が。
そして、原作ファンにオススメできないのは、あまりにも色々と改変されているからです。5人vs5人になっているとか、まぁ、色々と……(その改変っぷりが面白いというのもあるんですけれども!!)。簡単に言ってしまえば、この映画が描こうとしているのは「太平の世にあって自分達の存在を問われている伊賀甲賀がどのようにして生き残ったか」であって、忍者たちの個々のディテールではない、ということです。
いずれかの原作を一通り知っていて、ある程度は思い入れもあって、そのうえでアホな映画のアホさを愛せる、オリジナルな改変に目クジラは立てない、そんなアナタには大変にオススメです。オススメ前提条件の幅が狭すぎます。まぁ、有り体にいってしまえば一般的にはこの映画は、うんこと呼ばれるんじゃ、ないのか、な!
でも私は「メゾン・ド・ヒミコ」よりもこちらのほうが気に入りましたので色々と思い入れたっぷりに書きたいと思います。以下、原作も映画もネタバレする感想メモ。


■弦之介さま人望なさすぎ。オレがリーダーなんだから駿河に行くノー!!(地団駄)■夜叉丸、袖長いよ。長過ぎるよ。■弦之介さまはそのままで現代のテレビ番組にでも出演してそうなのに、朧さまはどう見てもアイヌかどっかのコスプレっぽい。■佐ノ助せっかく夜叉丸の顔を盗んで潜入したのにまるでそのことがピンチにつながらねー。■五人vs五人の中にせかっく蛍火もいるんだから、抱きつき →「……夜叉丸どのではないっ!」を観たかった。むしろ朧さまと百合フラグっぽいよ蛍火。でも一番かわいかったな。■弦之介さま何もしねー。人も殺さねー。■お、朧さまはヤル気まんまんで馬駆って人を殺したーー!■はげんの瞳超つえええぇぇぇぇ!!!(えええー?)■じゃ、じゃあ、弦之介さまの瞳はなにするのー■天膳が不死って噂、甲賀にまで流れてるよ……■朧レイプマダー?■この朧さまがレイプされるわけがねー■天膳、なんのために弦之介さまを呼び出したの…? 死にたかったの……?■って、陽炎に「私を殺せ」とか言って接吻して毒で本当に死んじゃったー■ま る で 不 死 じ ゃ な い■よくそんなんで300年も生き長らえたよ、まったく■弦之介さま時間をあやつったー!すっげー!月のサイズも変えちゃったー!(ナイス画)■お、おお。跡目争いの代理戦争にくわえて、服部半蔵がなんか卍谷と鍔隠れの両方を狙ってるー■えーと、なぜキミたちはその砂浜で唐突に出会ったのかね?■えーと、なぜキミたちは「やはり殺しあわねばならない」のかね?■朧さまが弦之介さまのこと刺したよ。え。えええ。どうなるの?えー。■めーつーぶーしーーーーーー(ここはかなりグっときた)■こうして鍔隠れの里も卍谷も、徳川家康に保護されて現代まで生き延びたのでした…って、ま、まさか、現代に転生しているENDじゃ……■さすがに違った(ちぇっ
弦之介さまが、たとえ敵方であっても人を殺すことを避け続けたのに対して、アッサリと朧さまが殺したのがすごく面白かったです。そういった設定と、駿河までいったことなんかが最終的にちゃんと繋がっていて納得のラストでした。
アニメバジの二人が時代の波に逆らえずに最終的に殺しあいをせざるをえなくなり心中してしまった、利用された自分たちの運命を哀しみつつ最終的に「個」(恋でも愛でもいいよ)に終着したのに対して、この二人は時代の波に流されて殺しあいはしたものの自分(しのび)達という存在を救った、つまりは「大義」に終着したわけですね。なるほど。
一族の長として、この朧さまのほうが数段好感が持てました。
あ、ちなみに。女性陣は全員律儀に(?)付け睫毛してました。バッサバッサ。