『酒気帯び車椅子』 中島らも

酒気帯び車椅子

酒気帯び車椅子

前半のあまりにも順風満帆な主人公の姿が、あとにくる破滅のための前奏であることがあまりにもあきらかなので本当にドキドキしました。うまくいけばいくほどに、奈落の深さが深くなるような感じ。
実は私は全般的に予想外なことばかりでした。まさかヤクザが本当に危害をくわえてくるとは思わなかったし(なにかもっと紆余曲折があって、ヤクザを警戒していたら違う方向(会社の社長とか)から危害がくるものだと思ってました)、居酒屋にいた刑事が本当に刑事だとは思わなかったし、車椅子に乗り始めるのがこんなにも後半だと思わなかったし、らもさんの小説でこんな暴力描写に出会うとも思ってなかったです。
面白かった。のだけれども、なにか食い足りない気がする。
順調だった人生と、自身の体をメチャクチャにされて、それでも入院している間ユーモアを失わない主人公とか、アル中とヤク中だとか、「それでも人生は前にしか進んでいかない」ことを肯定しているところは大好きなのだけれど。
えーと、これはタブー中のタブーな感想というか。アレなのですけれども。伊坂がまったく同じ構成で書いたらどうなっただろう、と想像しました。