『手紙』 東野圭吾

手紙 (文春文庫)

手紙 (文春文庫)

映画効果で平積みされていたので成田空港で購入。面白かったです。
「自分を大学に進学させるために強盗殺人を犯した兄」を持つ青年の半生の物語。宮崎勤の妹も婚約を破棄されていましたっけ。今頃どのように生きているのでしょう。名前を替え、住む場所を替え、怯えながら暮らしているのでしょうか。と、なんの痛みも感じずにサラリと書くワタクシというものを責める、そんな本でした。
特に途中に出てくるとある女性が自分に重なるようで読んでいて痛かったです。

あの、小金持ちの娘ね。うちはまったくもって資産家ではありませんが。
なんだろうな、親の庇護の元で生きているのにそのことに気付かずに自分は自分の意思で自分の思うとおりにちゃんと生きて主張を持っているのよーという世界観の狭さというか。甘えの上に成立している正義なのに、その正義を正義と疑わない、「見えていない」偽善っぷりみたいなものが。ぐさっときました。
私は間違いなく、そういう人種なので。
何度か書いてますけれども、物語というのは読んでいると自然におとしどころが透けて見えてくるもので、それが予想の範疇をこえないと意外性に欠けると酷評してしまったり、予想を裏切りすぎていると無理があると酷評してしまったりするのですけれども、この物語の落としどころは私の感覚では気持ちの良いところでした。ああ、そうするのか、とストンと入ってきた。
でも、なんだろうな。手放しで傑作だ!という気にはなれないこの感じは。良いものを読まされた、というようなこの感覚は。