『少女は踊る暗い腹の中踊る』岡崎隼人

少女は踊る暗い腹の中踊る (講談社ノベルス)

少女は踊る暗い腹の中踊る (講談社ノベルス)

メフィスト賞だそうで。いかにも。うーん。講談社の盛衰というものに思いを馳せずにはいられませんね。すっかりノベルスの棚が小さくなってしまって……。面白かったのか面白くなかったのかよくわからない本でした。
最初から主人公の狂気の下に世界は語られていて、それがいつか「健全な世界によって崩壊させられる」というカタルシスを迎えるものだとばかり思っていたのに、読めば読むほどに世界が主人公の狂気に加担していくというか、「え、あ、それも事実なの」「え、それはそのままなの」ということで世界が埋まっていってしまって、ものすごく気持ちの悪い本でした。
でもじゃあ、つまらないかというとそうではなくて、暴力には辟易しますけれどもそれなりに面白かったのですよね。特に蒼以ちゃんの描写とか、悪くなかったように思うのです。でも面白かったよー読んでみなよーと言う気にはなれない。そんな本でした。

世界の狂気と人物たちはそれなりに面白く寓話的でもあって悪くないのに、そもそもの原因の部分だけが小さくまとまっているのはなに?という違和感は否めない。
まぁでも、狂った世界というものは堪能できたので、この人の2冊目を読んでみたくはあります。そこで健全な世界をきちんと描けていたら、しばらく追いかける。