『男たちの日記』

麻草(id:screammachine)くん主演、『男たちの日記』を観てまいりました。
面白かったです。

あらすじ
十五年前に死んだガキ大将から届いた、一通のハガキ。
それはあの日、ガキ大将の死んだあの日に、崖の上で友情を誓い合った五人に宛てた、同窓会の招待状だった。
刑事になった俊也、デザイナーになった英夫、スポーツインストラクターの明、外務省に勤める直記。
そして新宿二丁目でオカマになった正光。
五人の男たちは、崖の上に立てられたホテルで再会する……!
(公式サイトhttp://www.ellestaff.co.jp/troops/play/index.htmlより)

いや、本当に面白かった。
お話自体も面白いのですが、男5人で一度最後まで『男たちの日記』という芝居をやった直後に、まったく同じ内容を女5人でやるというその実験的な構成が本当に面白かったです。あ、これってあんまり役者にとっては褒め言葉になっていないかな。まぁいい。私は知らずに行ったので同じものが始まった時には本当にびびった。てっきり男版と女版は日を分けてやっているものだと思っていたよ!


麻草くんは、男版のほうでオカマを怪演しております。
美しくあろうとするけれども美形に生まれていないオカマがそこにおりました。あまりの目力に、客席振りの目線のときに正視できなかった。(したけど)


以下、ネタバレ感想なので観ていない人は読んではいけません。


正直なことを言ってしまえば、なぜ女版をやったのかがよくわかりません! よくわからないからこそ、それをやったということを支持するわけなんですけれども。
男版のほうがね、あまりにも完成度が高いのですよ。面白い。普通に。間もうまいし、ひきつけられるものがある。
その後に、まるっきり同じ内容を女版でやるにあたって、紆余曲折があったのかなかったのかわかりませんが、あのようなヅカ演出というのは、これはもったいなさすぎる!! なぜあのような演出になったのか、そのへんの経緯をぜひとも聞いてみたいと思いました。
いや、それはひとつの選択肢としてありえるとは思うのですよ。男のみの物語をONLY男版で上演した直後にONLY女版で演じなくてはならないという時に出てくる答えとしては、

  1. 完璧に男装する
  2. ジェンダ入れ替えを行う(全員女設定にして、オカマをオナベに)
  3. ヅカ的男装にする

あたりが想定される解だというのはすごくわかるのです。でも、今回、ヅカをやるにはあまりにも完成度が低かった(言っちゃったー)。なにをもって完成度と呼ぶのか、という問題はあるにしても、……いや、もうぶっちゃけよう。あの殺陣はないわー。というのが私の正直な感想です。殺陣を踊るように表現するのはいい。そこに効果音を入れるのもいい。でも、その場合、殺陣も効果音も、へっぽこではかっこよくないですよ。


「同じ脚本を男のみ/女のみでまったく違う演出で演じたときに、舞台はどう変化するか」
というのは大変に面白い試みで、私は昔からそういうのが好き*1なのですが、今回はちょっと女性陣に不利すぎる設定だったのではないかと思います。せめてジェンダ入れ替えをしないと……。別に女だけの物語にしたって、成立しただろうに……。


しかし、すごいなと感心したのは、女版でオカマをやっていた方です。オカマを演じる男装の女性、というややこしい役を見事にこなしてらっしゃいました。いや、それが「オカマ」を表現していたかどうかはわかりませんが。でもとにかく役どころとして十分な何かを客席に観せていたと思います。天晴れ。
と、まあ、ジェンダ入れ替えをしなかった場合(つまり今回の上演形式)の最大の難所であろうところのオカマがこれだけうまくいっているのだから、本当は他の人たちがもっと、こう、がんばらないといけなかったんだろうなーとは思うのですけれどもね。


ここからは物語の内容に関して。
男版も女版も、ラストがよくわかりませんでした。15年研ぎ続けた思いが手帳(手錠)によってはばまれちゃった…というオカマの泣き顔のような笑顔の後、の、乱闘?ダンス? そして声が聞こえて、の後の表情。これが、どっちもよくわからなかったーーーーーー。
男版は驚いた後にオカマのみ微笑んだのかな。女版は全員満開の笑顔。男版のほうは単純に恐怖なり愛情なりの感情を継続していて、女版のほうは何かが昇華しちゃって笑顔になった、って解釈でいいのかしら……。
わりと肝心なところを掴めなかったので反省です。

ふーーー。観終わってからこうして色々と出てくるというのは、良い舞台だった証拠だと思います。
良い物を観させていただきました。日曜日までやっているようなので、お時間のある方は中野坂上に行って観ると良いと思います。

*1:古くは、蜷川と佐藤の『零れる果実』、野田と蜷川の『パンドラの鐘』あたり