『消えた少年たち』

消えた少年たち〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

消えた少年たち〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

消えた少年たち〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)

消えた少年たち〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)

おおおおお面白かったーーーー。最初、上巻を買ったとき、池袋の某本屋さんで平積みされていたんですよ。で、平積みされてんだから売れ線の新刊なんだろうなーって思って買って、面白くてすぐ読み終わっちゃって、近所の本屋さんを何軒まわってもなくて、あれー?って奥付をみたら2003年刊行の本で、うわ新刊じゃなかったーーーーー!ってずっこけたんですが。大きい本屋ちゃんにいったらちゃんと積んであったので無事に入手できました。
いやー、これは発行から5年たっててもクリスマスの時期に積まれるのわかるわー。<追記>
じゃあがんばって感想を書くよ。
この本のなにがすごいって、物語をばっくりと書くと、フリーのゲームデザイナーをやって一山当てた男とその妻があっという間に入ってきたお金を使い果たしてにっちもさっちもいかなくなって家のローンもあやうくなったので2人の子どもを連れて田舎のゲーム会社に就職したんだけど人間関係がうまくいかなくてグダグダして息子もなんか学校でうまくいってなくてウダウダして奥さん妊娠してて夫婦そろって敬虔なモルモン教徒でその横のつながりでなんとか生活していて……って感じなんだけど、上巻を読み終わっても「少年たち」がさっぱり出てこないことにあります。ひたっすらに夫婦の生活が描写される。
でもご安心を。全然飽きません。その理由のひとつは、モルモン教徒の日常が信者視点から描かれていること。これ本当に面白かった。モルモン教徒なんてケント・デリカットしか思い浮かばねーよ、という私には興味津々。もうひとつは、ところどころに散りばめられた不穏な気配のもたらす緊張感が常につきまとうこと。下巻を探しているときにこれがハヤカワSF文庫だって気付いたくらいに、「生活が破綻しそうなモルモン教徒の夫婦の物語」でしかないこの物語なんだけど、ハヤカワSFだって気付いて、不穏な気配は伏線なんだね?って思って、「あ、じゃあ、これがこうなる?」って思って下巻を読み進む時のドキドキ感ったら!
そして、読み終わる頃には色々なことがすごく納得いく。
これは、そういう、丁寧に丁寧につづられた日常の上に立脚するから意味がある、素敵な小説です。読め。できればクリスマスシーズンに読め。