『サマーウォーズ』ブロガー試写会感想

子どもの頃、私にとって夏休みというのは母方の田舎で過ごすものでした。仕事のある父を東京に残して、母と二人、あるときは飛行機で、あるときは新幹線と水中翼船を乗り継いで、あるときは夜行列車で、あるときはフェリーで向かう田舎。それは、ディズニーランドへ行くことよりも、映画を観ることよりも楽しい、幸せな時間でした。


祖父母と枕を並べて眠る夜。
シンと暗い、隣の仏間。
そのむこうに、夏用ふすまのヨシズの間から漏れる、応接間からの光。


子どもたちが布団に入った後、大人たちはいつも応接間に集まってテレビを観ながら夜遅くまでお喋りに興じていました。クーラーのある2階に滞在している従姉たちはもうすっかり眠る頃、私が寝付くまでと団扇であおいでくれていた祖母が先に寝息をたてているその横で、私はじっと大人たちの談笑する声に耳を澄ませていたものでした。私の秘密の楽しみ。そっと大人たちのお喋りに耳を傾けたり、「ねむれないー」と参加しにいってみたりした、あの甘美な時間。いつもは観させてもらえない夜遅い時間のテレビでは、久米宏が陽気に花金チェックをやっていましたっけ。
なぜか私はその地に夏以外行ったことがありません。だから、いつも、親戚たちの記憶は夏の記憶。
あのたくさんの夏たち。




そして、『時をかける少女』という映画が公開されたあの夏。
ブロガー試写会に応募してみたら当選して、観て、あまりの感動に試写室を出た瞬間から世界が眩しくて泣きたくて嬉しくてたまらなくて、友人と何度も感想を話し合い、細田監督に関連するあらゆるイベントに行こうと必死になった、あの一度きりの特別な夏。



私は『時をかける少女』という映画が本当に好きで、好きで好きで好きで好きで好きで好きでたまらなくて、だから、細田監督の新しい映画が上映されると知った時には本当に嬉しくて、一刻も早く観たくてたまらなくて、でも余計な情報は入れたくなくてあらゆるCMその他を華麗に回避して、事前情報真っ白なままでいて、やもたてもたまらずじゃ、とブロガー試写会に応募して、試写会当日はソワソワしてしまって仕事が手につかないほどでした。
観る直前、フとあまりにも楽しみにしている自分に不安になりました。
私は、この映画に何を期待してるんだろう? この映画は『時かけ』ではないのに?
わからないままに映画は始まり、終わり、私はこの映画についてブログで語るべき言葉を見つけることができずに、今日までダラダラと感想を書けずに過ごしてしまいました。今も感想として何が書けるのかわかりません。何を書いてもネタバレになってしまう気がするし、何を書いてもこれから観る人に先入観を与えることになってしまう気がして。




なので、「私自身」の夏と家族の記憶と感傷をもって、公開前の感想とさせていただきます。この映画を観たら、そんなようなものたちがブワっと蘇ってきたよ、とだけしか、書けない。というのが10日間考えた結論だからです。(アホか!もっとちゃんと内容のわかるモノを読ませろ!という方は、公式ブログ(http://s-wars.jp/blog/index.html)に他のブロガー試写会に行かれた方々の感想集があります(http://s-wars.jp/blog/2009/07/05/)のでそちらをどうぞ)
映画が公開されて、ネタバレが解禁になったら、内容に関する具体的な感想を改めて書きたい。いや、書かねばならない。と思っています。ブロガー試写会が終わってから、一緒に行った友人とタクシーに乗り込む間もおしむように溢れる感想を語り合った、あの感覚を、とどめておきたい! 内容を踏まえた上で書きたいこと、いっぱいある!!
でも、今は書けない。
観にいく人には、何も考えずに観にいってほしい。



というわけですので、皆様どうか公開されたら私と感想を語り合ってほしい。喜びも不満も、共有したい。リアルじゃなくてもいいんだ。ネットでいい。繋がりたい。それがこの映画のテーマでもあるのだから。