『木曜組曲』

昔どこかでみた予告が面白そうだったのをずっと覚えていて観たかった作品なのですが、やっと観ました。一ヶ月くらい前に!観て良かったです。
鈴木京香原田美枝子富田靖子西田尚美加藤登紀子浅丘ルリ子という豪華女優陣の、女ばかりのミステリー映画。

4年前に謎の薬物死を遂げた女流作家・重松時子。彼女を偲んで毎年5人の女たちが時子の館に集っていた。しかし、今年は謎の花束が届いたことにより、いつもと雰囲気が変わってしまった。そして、彼女たちは時子の死について自らの推理を語りだす

木曜組曲wikipedia
巨匠重松時子と、その血を継ぐ(あるいは深く関わる)女たち。みんな、ルポライターだったり小説家だったりと「書く」ことに携わっていて、時子の存在は、それぞれに対して違う形で「重圧」となっている。それが、うまい。
時子に秘かに後継者と指名されて、後年は時子のゴーストライターをしていた富田靖子が皆に「後年の重松時子作品はひどかった」とか言われる時の感じ、そこからの「私が書きました」と認めるところからの開き直りと「後継者と名指ししてもらったのは私だけ」というプライド。観ていて、ぞくぞくしました。
推理合戦になって「あなたがあやしい」「あなたこそこうだ」と言い合った後で「やめましょう、食事の間は」って一言で談笑しながらご飯にできる、女の集団の言語化されない怖さとかも、とても良かった。
中でも、加藤登紀子!!
並居る美人女優たち(役柄では「書き手」たち)に混じる、美しくはない(役柄では担当編集者)の加藤登紀子の、細い小さな目の怖さ、優しさ、悲しみ。


ただの担当編集者が、一緒に暮らすの?とか思っていたら、ちゃんと同性愛を思わせる描写があって「ああ、そういう愛でもあったのか」と、とても腑に落ちました。
それだけに真相は哀しく美しかった。作家重松時子を永遠にするために、自殺をさせる。その愛って、すごい。加藤登紀子が愛したのは、重松時子その人なのか、「重松時子」という作家だったのか。
置手紙を置いて、外に出た後の加藤登紀子が本当に良くて、観ていて鳥肌が立ちました。
あの手紙をそのままにしておいて、誰かが真相に気付くのをじっと待つ。時子が再び息を吹き返し、脚光を浴びるのを、ただじっと待つ。そんな壮絶な生き方が、加藤登紀子にはとてもよく似合う。
翌年も、そのまた翌年も、みんなまた集まるのだろうなー。女ってすげーね。生まれ変わっても絶対女に生まれたい。