読書日記 『博士が愛した数式』 小川洋子

博士の愛した数式

博士の愛した数式

また電車の中で泣いてしまったー!!
でも、どこも引用することができない。「数学は美しい」ということに、涙が出てくる。
私は理系の大学付属の高校に通っていながら、一年生の時に数学で赤がついてしまい、まんまと文系に進んだという落ちこぼれなのですが。何を隠そう、無線部という激しく理系オタクが集まる場所に所属しておりまして、ハンダ片手に基盤作ったりしていたのでした。つまり、何が言いたいかって、理系大好きなんだけど能力がついていかなくて、という悲しい人だということです。
そんな私にとって、この本は、本当に素敵でした。ああ、あの人も素数の魅力について語っていたっけ、と遠い目で思い出す夕暮れの校舎(思い出特権で美化)あの頃はシモネタを言っても引かないどころか乗ってくるというだけで男の子たちに認められたものでした。世界は簡単なルールの中に在りました。
て、ワキ道にそれた。
なにが言いたかったかって、その頃の私は、数学の美しさを、もっと理解していたはずなのだ、ということです。
私の友人のひとりは、数学者として某大学で教鞭をとっているのだけれど、彼も博士のようだったかしら。彼の撮った写真にしか、興味を持ったことがなかったんだけれど。今度、話とか、聞いてみようか。(それもまたいやらしいことかな)
読み終わって、本をパタンと閉じた時に目にはいってきた帯が激しく邪魔だったので、これから読む人は捨ててから読むと良いと思います。こないだもなにかの本で帯が表紙のデザインを邪魔しているようでムカついたんだけど、あれはなんの本だったかなあ。

<以下ネタバレ>


変わっている人間を「変わっている」と描写するような陳腐な真似はここにはない。こんなことに感嘆するなんて、どんな本を日頃読んでいる昨今だったのか知れますね。えへへ。
80分しかもたない記憶、というのはどういうものなんだろう、とこの病気に関する何かに触れるたびに思う。ところてん式に、順番に忘れていくんだろうか。
「僕の記憶は80分しかもたない」
あの、朝の描写は、いま読み返しても胸が痛む。
とてもとても個人的なことなのだけれど、ウチは祖父の代からのタイガースファンなので、博士とルートがタイガースを愛している事が、とてもとても嬉しかった。なんとはなしに、彼等と何かを共有できているような気がして。そんなことを喜ばしく思えるくらいに、この本は素敵。
・数学者 ・子ども ・阪神
これで私の心をわしづかみにしなかったら、ウソだ。
ラスト、施設に入った博士を訪れるシーンで、ドライビング・ミス・デイジーを思い出した。首からぶらさがった野球カード。