『オペラ座の怪人』

演劇の人としてはあるまじきことなのかもしれないのですが、わたくし、実は『オペラ座の怪人』を観たことありませんで。どんなお話かもよくわかっておりませんで。てっきりシャンデリアとともに怪人が降りてきてバババババーンっていうあの怖い曲が流れて主人公のプリマドンナをさらうんだと思っていたんですよね…そして最終的には、プリマと怪人は心惹かれあうようになるんだけれども、周囲が怪人との仲を猛反対して、最後に二人はこっそりと舞台上で共演するのだけれども、オペラ座が炎上とかしてしまって、怪人はオペラ座を出ることができなくて、オペラ座と共に焼け落ちる…とか、そういうのを想像していたんですよ。焼け落ちるそのオペラ座からは怪人の歌声が響き、プリマはそれに泣きながら歌いこたえる…みたいなことまで想像していました。


全然ちがった!!もんのすっごい違った!!


というわけで、観てきました。お、面白かった…!でも理解できないこともいっぱいあった…!!
これはネタバレとか微妙だなーと思うのですが、一日の日記で真っ黒なところがいっぱいあるのもなんだかなーなので、ダダ漏らして書きたいと思います。


まずね、主人公のクリスティーヌの気持ちがビタイチわからなかった。というか、彼女には感情とか意志とかが描かれていたのかどうかがわかりません。ないんじゃねえの、この人形、という感じでした。


簡単に言ってしまうと、見た目に猛烈にコンプレックスのある世間知らずの怪人が、こっそり屋根裏から教育した自分好みの美少女に、いざ「一緒に地下で暮らそうぜ!そして音楽三昧の(そしてエロエロの)毎日を!」ってせまってみたら、美少女たんには美青年たんが現れていて、せっかく手塩にかけて育ててプリマにまでしたのにフられる、と、そういうお話だったのですけれども。


何度も、怪人に心ひかれたり、でもやっぱり幼馴染の美青年たんに心惹かれたり、でもやっぱり怪人たんとのあの不思議な夜が忘れられないノ…ってなったりするクリスティーヌたん。ラスト近くには、本番中(セックスじゃないよ。舞台の本番だよ)に怪人が現れてクリスティーヌたんをつれていってしまいます。そして衆目の前で「これでもう後にはさがれないぞ!さあ!私とともに!」みたいなことを言うんですよ。そしたら、クリスティーヌたんはなんかウットリしながら、しなだれかかったりするんですよ。
ワタクシ、ここでいたく感動いたしまして。ああ、見た目よりも恋よりも、人は才能に心引かれるんだわ…天才って…天才の持つ魅力の前には、なにものもひれ伏すんだわ…っ!!!と天才礼賛っぷりに鳥肌がたったんです。
と、こ、ろ、が。
その直後に、クリスティーヌたんってば怪人が自分の醜い顔を隠していたマスクをばばーんって。ばばーんって取っちゃうの!怪人激怒。ふごーっつって、シャンデリア落とす落とす。あれ?シャンデリアに怪人乗ったりしないんだ…という私の気持ちはまったく無視して、地下につれてっちゃうのね、クリスティーヌたんを。
なんかねーもうねー、最後まで、クリスティーヌたんが怪人を取るのか美青年を取るのか、わからんのですよ。だって、怪人よりも美青年たんを取るメリットが全然ないんですもの。怪人、マスクで隠している部分は確かにアレだけど、でもそれも途中から「もう怖くないわ」とか言ってたし。見た目悪くないし。なんか怪人エロいし。オペラ座から出ないひきこもりのくせに月に2万マルクとかもらっててお金持ちだし。天才だし。
でも、だめなんだなー。怪人もさ、「俺と一緒に生きるなら美青年たんを殺さずに放してやる。でも自由にしてほしいなら美青年たんは殺しちゃうぞ!」とか、脅すのよね。ばかー。そんなことしたら燃え上がっちゃうだろー。
で、まあ、まんまとクリスティーヌたんは美青年たんと生き延びちゃうわけなのですが。


結局のところ、人間見た目だよね!という結論…なのかな…これ。物語として、怪人を選んだほうが納得もいくし、美しいと思うんだけど…
でも、怪人のことを思って映画館でとてもとても泣きました。「行け!二人で逃げろ!」とか言うシーン。良かったね、あそこね。あそこでクリスティーヌたんが一緒に残ったら、もっと良かったね。(しつこい)

私が脳内で思い描いていた『オペラ座の怪人』とはだいぶ違いましたけれども、でも面白かったです。CMでもやっている、埃がばばばーっと取れてきれいになるシーン、あのシーンを観るだけでもお金出す価値ありますよ。鳥肌たった。音楽とあいまって。
とてもとても満足でした。