『ハサミ男』

ハサミ男 (講談社ノベルス)

ハサミ男 (講談社ノベルス)

言わずと知れた名作の映画化。ぐずぐずしていたら、今週の金曜日で終わるというので急遽行ってまいりました。
いやーー。面白かった。と、断言していいものかどうかわかりませんが、私はすごい面白かったです。レイトショーだったので1200円で鑑賞できたのですが、適正価格だと思いました。ただ、1800円だったら高い。1500円でも、まあ、許すかなー。1200円なら人にオススメできる作品でした。
あーちなみに、原作原理主義の方は萎えるかもしれません。あと、『フロム・ダスク・ティル・ドーン』に怒る人とか。とりあえず、原作を未読の人は観ないほうがいいこと確実です。
インターネット殺人事件(http://internet.kill.jp/d/200504.html#d03_t1)のマトリクスとそれにまつわる説明が理由ズバリ。原作未読で映画を観て、原作を読むというのが最悪の流れだからです。
でも…原作読んでない人がどんな感想を抱くのか聞いてみたい気もするな。すっごく…
では、以下、映画のみならず小説もネタバレします。



この映画、原作既読者にとって最大の関心は、あの叙述トリックをどう映像化するのか、というところにあると思うのですが。いやー。いきなり登場からむちゃんこ重なってましたね。めちゃ歩幅あってるー。くっつきすぎだって。不自然だって。
私は観ながらずっと「これは、観客がトヨエツは実在していないということに気付いている前提で作ってるのか?それとも観客は気付いていないという前提なのか???」ということを見極めることができなくて、過去のシーンからトヨエツを抜いたフラッシュバックシーンがあることで初めて「わあ!気付いてない前提だったー!」となったのですけれども。
でも、それでわかりましたよ。
ようするに、これ、真面目に作ったお馬鹿映画なのですよ。
スタッフは、原作を読んでいる人間が叙述トリックをどう処理するのかを楽しみに来るということを了承していて、その上で遊んだのです。豪儀な遊びやで。
いやーだって、そうじゃなかったら、あの切抜きみたいなトヨエツが屋上からゴオオオォォォって落ちるシーンを二回やらないって。あれが一度だったら私も「素か…?」と疑うところでしたけれども。二度使いまわすってことは、わかっててやってるんですよーというサインですよ、あれは。
たぶん。
ベコーンって男を殴ったヒロインが股間をヨイショっと蹴り上げて台所に包丁取りにいったかと思いきやポットを取り上げて、熱湯をかけるのかと思いきや殴るシーンとか。
トヨエツがフェンス乗り越えて半透明になったあとでなぜか空中浮遊で実体化して語りだすシーンとか。
裸足でパジャマで徘徊しているヒロインが笑顔で「朝ごはん食べにいきましょう!」とか言ってるのに精神安定剤を飲ませようともせずに無問題でウキウキしてる刑事とか。
あれらは、全部、ギャグなのです。私、爆笑。見知らぬ人、爆睡。
そんなわけで、私は大満足です。前半の割と真面目に原作を処理しているところも面白かった。たるいけど、良かった。


<追記>
ゲロ吐きシーンの多さも素晴らしかったです。最初にビニール袋をかぶってゴロゴロやっているところを観たときには、そういや自殺願望のある人なんだっけ、と思ったけど。未遂を繰り返す自殺志願者の滑稽さを皮肉…ったんじゃないだろーなーー!!ははははは!
煙草を煮詰めたドロドロした液体をぐびぐびと飲みだした時には本当にプルプル震えちゃいました。それで、ガチャーン(コップ落とした)、うっ、ううう(ゴロゴロ)おええええぇぇぇ(ゲロ噴水)おえええぇぇぇ(ゲロ噴水)おえええぇぇぇ(ゲロ噴水)おえええぇぇぇ(ゲロ噴水)おえええぇぇぇ(ゲロ噴水)って。

それにしてもトヨエツえろかったなー。なんていうか、あの背の高さと、肉のつきかたはやばいです。引き締まってない、でもデブじゃない身体って、生々しいね。本当に何から何までエロかった。何しててもエロかった。


あと、一緒に観にいった人たち総勢7人で一緒にご飯を食べたのですが。私は全員と面識があったのですが、その中には数名の初対面同士の方たちがいらっしゃいまして。ちょっとドキドキしていたのですよ。でも、共通の単語が多くて普通に話が弾んだので
「わーミステリー好きな人たちばっかりなんだなー。良かったー。奇遇ー」
とか思った自分に呆れました。そりゃあな。全員『ハサミ男』読了してるんだからな。前提条件だよな。