いい加減イチローの挙動が鼻についてきた(2周目)
いやでもかっこいいよね。1-2塁間ぬけた後ホームベース踏んでカメラ指差しね。
ここだけの話、あれは私に「ことこ、みてたか?」ってやったんですよ。実はね。実は。
『東京タワー』リリー・フランキー
- 作者: リリー・フランキー
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2005/06/28
- メディア: 単行本
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が。
なんというか、これはずるい。泣ければ面白い本かと言ったら違う。いや、面白い本だったんだけれども。なんて言えばいいんだろうな。なにかどこかが腹立たしいのですよ。
まず第一に、私にはこの人の文章が読みづらかった。ぶっちゃけて、下手だと思った。長い1文の中で言っていることが変化している。あるひとつのエピソードを語っていて、それに関連する話や、関連していないけど連想された話を挿入するときのやりかたが、2行空白あけでただ挿入される。など。エピソードの積み重ねをいかに見せるかが作家の仕事じゃないの?といいたくなる。伏線だと思っていたエピソードが拾われていないとか、なんの前フリもなく後半になって重大なことが明かされるとか、数えあげればキリがない。
読みながら、何度も「え?この人なに言ってるんだ?この文章で」と読み返した。こういうつっかかりは、正直本への没頭の邪魔になる。
別に、独特の文体であることには抵抗を感じない。文章そのものの武骨さは、味と言っていいと思う。けれども構成力が圧倒的に不足していると強く感じる。ひとつひとつの文章の構成もだし、段落ごとの構成もだ。だから、これが初稿ですというのなら大絶賛できる。ここから全体の形を整えるなら、素晴らしい。でもこれが完成形なんだよね。
ただこれは、作家なにしてんだ、と言うよりは、編集なにしてたの?ということになるのかなとも思う。そしてたぶんそれへの答えは、下手に手を入れることでリリーさんの文章の持つ空気を壊したくなかった、というところなんだろう。
第二に、おかんの死というものをこんなにも正面から、しかもリリーフランキーが書くというのはずるい。これは題材的にはいわゆる「お涙ちょうだい」と言っていい私小説だ。けれども書き手がリリー・フランキーで、しかも真正面からストレートに書いているがために、何か本来こうした題材のものに対して課せられるデメリットを回避できているように感じられてならない。
つまり、一言で言うならば「リリーフランキーが書いたから」で許されていることが余りにも多い。
そのことを丸ごと否定はしない。許されようとしている、のではなくて、許されている、であるというのは作家として稀有なことだし評価すべき部分なんだと思う。作家読みというものも世の中にはあるのだし、私だってリリーフランキーの本だから読んだのだ。でも、こういうやり方は一冊限りにしてくれよ、と思う。
そして、次の本を本屋さんで見かけるのだけれども手を伸ばす気にはなれない。
つまり、私はこの本に号泣したし面白かったけれども、そういう評価をした、ということなのだろう。
上の続き
はてダにあげられてる感想文の絶賛の嵐をながめてゲンナリしながらもいくつか読んでみて、唯一面白かったので。
リリーさんが「東京タワー」で留めておきたかったのは、「生きているオカンの姿」だったと僕は感じていますし、そうであってほしいと思っているのです。
id:fujipon:20060314#p2
あえて内容には触れなった上の感想なのですが(それはそこに触れると猛烈な自分語りになるしかなくなるからです)(私は親孝行してないナ…とか書いてどうするってんだ)(くだらねえ)
そうですね。リリーフランキーという人が、今はもういないオカンにできる唯一のこととして書いた本、と考えると、文体なんてことはどうでもよくて、ただただ、リリーさんのオカンのことを、私たちまでもが忘れられなくなるための物として捉えるべきなわけで。大成功。まんまと。です。なるほど。
そういえば私も読みながら、リリーさんの友だちとどんどん仲良くなっていくオカンに心底からホッとしたのでした。そして、それが息子への気遣いの一部でもあったことに、この世代の人というものを強く感じたのでした。自分の身に置き換えて考えるとしたら、このオカンのように生きることができるだろうか、というそっちだなー。
余談になりますが。この本を私にすすめてくれたのは弟でして。たぶん彼にすすめられなかったら気になりつつも一生手にとらない本だと思うのです。彼が最近になって笹塚に引っ越したのはもしかしてこの本の影響もあったのじゃないかとか邪推しています。えらい感動しておりましたからね。ういやつじゃ。
おいおいこんな面白いものがあったじゃないか
本屋大賞をメッタ斬り! ノミネート作品の順位を予想
http://nikkeibp.jp/style/life/topic/honya3/060310_2nd/index.html
メッタ斬りコンビがこんな面白い解説をしてくれていた。
豊崎 とりわけいただけないのが、そこかしこにあるアフォリズムめいた言説の数々です。
栄枯盛衰の無情、家族繁栄の刹那。人々が当たり前のように求める、その輝きと温かさを玉虫色のものだと不信な眼でしか見ることができなかった
(途中引用部分略)など。そういう同人誌調ナルシスト言説には、正直いって相当辟易(へきえき)してしまった。
もう、もう、豊崎社長ばんざーい!ともろてを挙げて賛成です。私もこういうところ、本当に気持ち悪かった。
大森 僕が小説としていちばん良いと思ったのは、「朝食に食べるぬか漬けのために、いつも目覚ましで夜中、明け方に起きていた」というオカンのぬか漬け描写
私は、ぬか漬けを結局誰も継がなかった(と思われる)部分がリアルで好き。あと関係ないけど、エノモトが好き。
大森 (略)小説としてうまく書いちゃうと、こんなに広い読者層にアピールしなかったんじゃないか。いわば、小説っぽくないところでウケてる小説。
うーん。そうか、私の納得のいかない部分こそが売れているカギか。私はリリー・フランキーが作者だということが売れているカギだと思います(しつこいよ)